2024年12月22日(日)

MANGAの道は世界に通ず

2022年1月8日

『ここは今から倫理です。』

 筆者は「耳読書」という形で、スマートフォンのKindleアプリから電子書籍を3.5倍〜4倍即程度で読み上げて聴くということを習慣にしている。これにより、読書が苦手で漫画ばかりを読んできた自分が、年間で100冊程度にはビジネス関連書籍を(耳から)読むことが可能となり、これにより得られた知見や書評を定期的にまとめ上げ、自分のビジネス人生に大いに役に立っていると実感している(なお、この耳読書テクニックは友人たちに聞かれることも多く、伝聞していったところ、「この1年で聞いた中で一番役に立つ話だった」といった感想を多くもらっている)。

 これらの書評は、10点満点の評価とともにまとめあげているのだが、数少ない、書籍でなく漫画でも「10点満点の学びがある」と混ぜ込んでしまうものがある。自分の10点満点の基準は「人生が変わるレベルの本」なのだが、それに該当するのが本書『ここは今から倫理です。』(雨瀬シオリ、集英社)だ。あまりに学びが多すぎて、思わず書籍と同列に評価してしまったものだ。

 筆者も、日々ビジネスや経営に携わる中で、上手くいかないことがある。人間関係に悩まされることもある。不確実な未来に、どうしようもなく不安で眠れなくなる時もある。そんな全ての悩みに対して指針を与えてくれて、いつでも原典として立ち帰ることができ、「より善く生きる」方向性を提示してくれるのが本作品だ。

 現在は6巻まで刊行中だが、オムニバス形式で毎話ごとに物凄く深い学びがある。何度も読み返したくなるし、さらには、現実の人間の悩みに寄り添い描かれているため、感情移入して号泣させられてしまうエピソードも多い。

 例えば、1巻第4話「よく生きる」では、日々の生活を乗り切るために、人形と対話し、その人形を愛することになってしまった生徒の話が登場する。これは、一般的には対物性愛と言われるもので、性的倒錯の一種とみなされることがあるが、これを同エピソードでは、「自分がよりよく生きるための方策=アレテー(徳、最高善)」である、と主人公である教師は教える。

 これによって生徒は救われ、元々の優しい心を維持し、他者に対して寛容な姿勢を保ち続けることができた。ビジネスにおいても、日々のストレスから解放されない時、このような自分なりの「アレテー」について考え、それにすがることで、より仕事生活において「より善く生きる」が実現できることだと思う。


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