このようにしていくと、実は人生におけるありとあらゆる課題や、悩みの場面は、全て自分が吸収して、新たな考え方を会得し、「より善く生きる」方策を身につけて、人に教えられるようになる教科書の場面なのだと考えることができる。人生はそれそのものが課題だが、それそのものが教科書である。全ては学びであり、乗り越えて成長できるために与えられた試練であり、山谷があるからこそ人生は面白い。
漫画は現代に蘇ったリベラルアーツ
このように人間を讃歌しポジティブに生きていけるようになるための、人生の教科書としてこの漫画は存在する。2巻第6話で、主人公はこのように述べている。「物理は物のことわりで、倫理は人間関係のことわり。石を水に投げ入れた時の波紋を考えるのが物理で、人に言葉を投げられた時に浮かぶ心の波立ちについて考えるのが倫理だ」と。
上述のように、全ては考える機会であり、成長のチャンスだと捉えれば、より一層、あなたのビジネス人生は美しいものになっていくだろう。この漫画は「全てにおいて絶対的な正解はない」というメッセージも発信しており、あくまで考え方の指針を与えてくれるのみ、というのも良質な部分だ。このように考えると、漫画は現代に蘇ったリベラルアーツだと言える。
リベラルアーツはもともと、14世紀からのペストの大流行などにより、世の中に希望がなく、生き方を見失った人々が、改めて生き方の指針を探るべく、文芸復興を行った結果として確立していったものだ。いま、日本も経済成長の時代を終え、未来が見えにくい不安定な世の中であるため、「生き方の指針」を求めている人が多く見受けられる。そんな中で、本漫画に限らず、現代人に生きる指針を与えてくれるための、現代のリベラルアーツとして、引き続き「漫画」の価値を世界中に広げていこうと強く決意した次第である。
戦前、東京帝国大学での生徒たちの必読書として、『善の研究』(西田幾多郎)というものがあった。まさに「よく生きる」を実現するための指南書であったのだが、同書での結論は、自分にとっての「好き」を追い求め続けること、それこそが「善く生きる」ことだ、とされていた。あなたも、マンガやアニメといった良質なジャパンコンテンツに触れて、「好き」を見出していくことで、「より善く生きる」、を実現していけるのではないだろうか。