10月28日に発生した自動車が北京の天安門金水橋付近で不幸にも人員や旅行者にぶつかっていった暴力テロ襲撃事件が、中国の民族宗教政策に対する一部の人が引き起こした悪意のある攻撃ではなかったか。その後1カ月も経たないうちに、東イスラム運動テロ組織のメンバーが10.28事件を起こしたと公然と宣言した。西側メディアはこれに対し多くの報道を行った。しかし、中国のイメージを悪くした人たちの懺悔はない。デマを流して責任を負わない。
防空識別圏設定直後の国防部は、国際法に符合していること、他の国はすでに設定していること、自衛のために設定していることを指摘することで、設定の正当性を強調することに必死だったように見受けられる。それは、今頃になって設定する不自然さを中国自身が感じているのだろう。そして、諸外国が非難を受けることは織り込み済みだったのだろう。そのためか、なぜこのタイミングで設定したのかということへの説明は一切ない。
27日の初めての論説は、先の設定の正当性をさらに補強する内容ではなく、諸外国の反応を批判することが主な内容となっている。「一方的に東シナ海の情勢の現状の変更を意図している」と「地域の緊張情勢をエスカレートさせている」という諸外国の非難を、長くもない論説の中で3度も引用していることには違和感があり、「キレ気味」とも感じられる。しかも、諸外国のこのような非難は中国がこれだけの大国になったからだと開き直りすら見られる。
そして最後には西側メディアへの批判に及ぶ。中国当局がこれまで報道を最小限に抑えてきた10月28日の事件をわざわざ持ち出すのだから、日頃から据えかねている西側メディアの中国当局非難に堪忍袋の緒が切れた感じすらある。しかし、この論説にも、なぜこのタイミングだったのかという説明はない。
日中関係改善の流れと防空識別圏設定のタイミング
その是非は別として、中国が現在防空識別圏を設定すれば、東シナ海の広範囲に設定することも、尖閣諸島を含むことも想像に難くないことだった。それ故に、筆者の関心は、防空識別圏そのものよりも、むしろなぜこのタイミングなのかという点にある。
日中関係は、今年の4月以降、すなわち習近平が権力ポストを独占して以降、大きな悪化は見せておらず、むしろ両国がそれぞれに関係改善に向けてサインを出している状況にある。経済面における地方政府の日本企業との経済交流への期待はそもそも高く、交流自体すでに回復して途上にある。その結果、経済データからも尖閣国有化宣言の影響による悪化はほぼ脱した感がある。延期が続いていた民間交流の開催が増えている。中国海監の尖閣諸島周辺への出航も目に見えて回数が減ってきている。