中国の国防部は23日、東シナ海に防空識別圏(Air Defense Identification Zone、ADIZと略称)設置を発表した。尖閣諸島の領有権を巡り日中関係は膠着状態にあるが、中国側は領海のみならず領空でも主張を強め、防空識別圏を設けることでより強硬に日本に譲歩を迫るようになっている。
日中の軍事や国防に関する認識の違い
今回中国側が発表した防空識別圏の範囲が日本の防空識別圏と重なる部分が大きいことから不測の事態が起きかねないと懸念が高まっているが、そうした日本での懸念をよそに中国国内では防空識別圏の設置は支持を集め、それどころか軍需産業の株価が上がるとの期待さえ出ている。
そこで中国の株式業界が防空識別圏設置に期待を示す2本の記事を紹介したい。一つは証券日報(ネット版)25日の「国防部が東シナ海に防空識別区設置を宣告―3つのレベルから投資価値を分析」(3つのレベルが何を指すのか判読しにくいが、資金の流れ、政策的支援、投機の機会、と思われる:筆者)という記事。もう一つは中国証券報ネット版に掲載された「東シナ海防空識別区の設立―中国衛星など北斗概念で受益」である。
今回の防空識別圏の設定は昨年秋に「中華民族の偉大な復興」のスローガンを掲げて習近平政権が登場し、富国強兵(中国的にいえば「富強」)を実現するため強靭な国防産業の育成を打ち出していることを受けてであろう。第二次大戦後に敗戦国として経済成長を第一に発展してきた日本と戦勝国として、経済成長と軍事力増強を二つの柱として発展してきた中国との軍事や国防に関する認識の違いをまざまざと感じさせる記事といえるだろう。
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記事①【2013年11月25日 証券日報(抄訳)】
国防部は11月23日に以下のような通達を出した。
「中国政府は1997年3月14日に出した『国防法』、1995年10月30日の『民用航空法』と2001年7月27日の『飛行基本規則』に基づき東シナ海に防空識別区を設置することを宣告する」
業界(証券:筆者)では対外的に国の主権と対国内の安全と社会安定の必要性から国防と軍隊で全面的な改革を深めることは、軍需産業にとっても良いことと捉えられている。軍需産業の成長を加速させ、研究開発制度の改革を進めて一部の民間企業が軍需産品の研究開発に参入できるようにすることは業界の長期的投資価値の面でもプラスだと見られている。