「中国衛星」社の2013年1月から9月までの財務報告によると、同社の収入は29億8600万元で前年比10.5%増だった。これは共産党18回大会(昨年11月:筆者)を受けて軍事や国防の分野で大きな動きがあったためであり、軍需産業の株式はそれ以来、上昇を続けている。
2020年までの中国衛星ナビゲーション産業の発展状況を予測すると、将来の産業規模は4000億元まで拡大するとみられ、北斗ナビゲーションシステム(中国版GPSシステム:筆者)やそれに関連した産品で広い応用が期待され、このシステムによる国内衛星ナビゲーション市場で60%、重要な応用分野では80%超の貢献が見込まれているという。
広発証券の分析によると、東シナ海での防空識別圏の設置は軍需産業の各分野の政策に明らかなプラスの作用を与える。国防部の楊宇軍スポークスマンは、中国政府は東シナ海の防空識別圏の設置は十分に法律に依拠しているだけでなく、通行の国際慣習にも合致していると述べている。(記事では軍需産業の株式取引は法的、慣習的に問題ないと主張したいのだろう:筆者)
* * *
【解説】
日中間で摩擦が高まる中で、防空識別圏の設置は株価上昇にプラスの影響がある、という上記の記事は日本からすると不謹慎に思える。敗戦国として始まり、戦後からの復興を遂げてきた日本と、戦勝国として国を作ってきた中国では軍事や軍需産業についての感覚が全く異なっていることをまざまざと感じさせる。こうした「感覚」の違いは防空識別圏の問題に限らず、日中間での安全保障問題を考える前提として踏まえておかなければならない。
日中間では平和や国のあり方についての視点が異なるだけではなく、近年起きつつある「パワーシフト」を巡る認識も両国間の摩擦に輪をかけている。中国は高度成長とそれに伴った世界第2位への台頭によって「もはや隣国の小国には侮られない」と自尊心を強めており、大国意識が増していることも強気の一因であろう。一方日本ではこうした中国に対して嫌悪感が高まり、それが歴史認識などの面での反発を強める原因となっている。