新1万円札の肖像が示唆するサスティナブルな社会
そんななかで渋沢がお札の肖像になるということには、少なくない意味がある。渋沢がお札になると発表されたのは、令和の発表と同じ時期であったから、新しい時代の国のあり方の象徴といえるだろう。
同時に発表された千円札は、日本近代医学の父として知られる北里柴三郎。五千円札は、女子教育の先駆者である津田梅子だ。サイエンスと女性の活躍、そして事業の発展が日本には必要なのだというメッセージと捉えることができるだろう。そして渋沢の事業であるから、Meだけが利益を求める事業ではなく、Weの事業である。令和時代のサスティナブルな社会に、そういった意識が必要だということを表しているといえるだろう。
渋沢が行なってきたことは、今の時代が必要としているものごとに見事にシンクロしている。だから『論語と算盤』は読み継がれ、今また、大きくクローズアップされているのではないか。時代が『論語と算盤』を呼び起こしたともいえるだろう。
私は渋沢栄一の玄孫(5代目)にあたるが、じつは渋澤家が『論語と算盤』を代々受け継いできたというわけではない。私自身、大学までアメリカにいたこともあり、40歳くらいまでは渋沢栄一といえば昔の人というイメージであった。しかし、実際に『論語と算盤』を読み始めてみると、今のことにあてはめて解釈すれば使えると気づいたのだ。そこからブログなどで言葉を紹介しはじめ、現在は定期的に勉強会を開かせてもらうまでになっている。
お札が刷新されたいま、『論語と算盤』を現代の生活やビジネスにどう役立てていくかを考えてみてもいいのではないか。