2024年7月1日(月)

商いのレッスン

2024年6月29日

<今月のお悩み>
■競合他社が発売した新商品が大ヒットしています。差別化を図りたいと思っていますが、妙案はありますか?
(ロイター/アフロ)

 1998年、ファッションの先端地である東京・原宿に開店すると、多くの来店客を驚かせ、地方都市の繁盛店に過ぎなかった「ユニクロ」の飛躍を決定づけた商品がある。

 大量陳列された色さまざまのフリースは一躍ブームを巻き起こし、2000年には2600万枚を売り上げる大ヒットを記録した。もっとも、フリースはファーストリテイリングが開発したものではない。すでにアウトドアメーカーによって商品化され、登山やアウトドアなど限られた用途に向けた高級品という常識があった。その常識を打ち破り、ユニクロは1900円で売り出したのである。

 その後も同社はヒートテック、ブラトップなどのヒット商品を開発し、今日では、ユニクロの衣類は一人一着は必ず持っている「国民服」といわれている。もし、「ヒートテックはスポーツ用品メーカーのもの」「ブラトップは下着メーカーのもの」という常識に囚われていたら、同社の今日はないだろう。

 「業界は過去、顧客は未来、ライバルではなく顧客に集中する」とは、同社の柳井正代表取締役会長兼社長の言葉である。

 ユニクロのヒットを真似て、多くの同業他社が小手先の差別化をして追随した。しかし、脅威が待ち構えるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛び込むファーストペンギンほどの成果は得られなかった。業界内を見渡して「差別化」と言っている限り、企業でも個人でも、ライバルには勝てない。注目すべきは業界の外である。いまや全都道府県の事業所にある置き菓子「オフィスグリコ」は、富山発祥の置き薬をヒントに考案したといわれている。


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