─椿山荘やワシントンホテルを運営する藤田観光が13日、「食材偽装」を発表した。(中略)外食業界を震撼させたのは「サーモン」(サケ)と表示しながら、海水中で養殖された「トラウト」(マス)を提供していたことを謝罪したことだ。
拡大画像表示
実は、海水養殖の「トラウト」を「サケ」と銘打って客に出すのは、業界では公然の事実。(中略)藤田観光の謝罪は「サケまで謝られたら、業界総ザンゲになってしまう」と関係者を慌てさせているのだ。(中略)
「トラウトは厳密に言えば”ニジマス”ですが、『サケ属』に属する魚です。弊社で使用しているのは海水養殖モノ。養殖モノでも海で育てば『サケ』、川だと『マス』の名称になると認識しています」(吉野家広報)─
根拠となる基準は、水産庁の定めた「魚介類の名称のガイドライン」である。このなかに、学名と標準和名と一般的名称を紐付ける表がある。川で生まれて海に下って成長する降海型のニジマスと、サーモントラウトは同じ種(学名:タイヘイヨウサケ属ニジマス)とされている。業者から仕入れてきた「サーモントラウト」が、サーモン(サケ)なのか、トラウト(マス)なのかは、そもそも曖昧だったのだ(表参照)。
イセエビかロブスターか─。これも「業界総ザンゲ」状態だ。
11月1日に名鉄系ホテルが伊勢エビと表記していた料理にロブスターを使っていたと発表して以来、ネット上では「ロブスターにはハサミがあって全くの別物で悪質」との評価が出回った。たしかにロブスターはザリガニ下目アカザエビ科ロブスター属(ザリガニの仲間)で、イセエビ下目イセエビ属の伊勢エビとは離れた種だ。
しかし、実際はここまで悪質ではない。使われていたのはアフリカンロブスターで、ハサミはなく見た目も伊勢エビに似ている。別名アフリカミナミイセエビで、伊勢エビと同じイセエビ下目だが、属が違うだけ(ミナミイセエビ属)。ガイドラインに従えば、「ミナミイセエビ」なら良く、「伊勢エビ」なら問題、となる。