2024年8月1日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月1日

⑤これらグレーゾーン作戦の象徴的意味合いは大きいが、台湾の強制統一のためには軍事封鎖が選択肢となる、と言う。

 大いにあり得るシナリオであろう。台湾への作戦としては、離島占領の指摘もあったが、この報告が述べるように、最初に隔離、その後に軍事封鎖というのが、一層現実味があろう。

 限定隔離でも中国にはリスクのある大作戦となるが、その象徴的、軍事的意味は大きく、決して軽い作戦ではない。多くの法執行船舶や軍のアセットの展開(空母等)は、当該地域の緊張を一挙に増大させるだろう。エスカレーションを孕はらんだ新事態が常態となる可能性がある。

日本ができる「準備」

 このようなシナリオを想定して、模擬訓練を含め対応を事前に良く検討することが重要である。先まず、隔離シナリオが起きないように、外交、軍事的対処を続ける必要がある。現状維持のための外交と軍事的抑止、対話の継続が重要だ。

 第二に、中国が作戦を始めた時の素早い初期対応が非常に重要だろう。米国、台湾の対応が鍵となる。その際に成すべき外交、準軍事、経済等の課題は多い。

 国際法上の立場、多国間連携を含む外交上の措置や情報発信等を速やかに打ち出し、国際情報戦、心理戦等で先ず勝つ必要がある。更さらに軍事、準軍事の多国間協働行動の準備が重要となる。

 また船会社等との連携や台湾への物資支援も課題となろう。船舶の拿捕・連行が起きれば一層重大なことになる。

 「台湾有事は日本有事」と言うが、「有事」前のグレー・ゾーン対応から、しっかり抑止し、脅威を拡大させないよう事態を管理できることが大切だろう。そのためには、一層の日米同盟の強化や多国間連携が不可欠になる。

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