2024年12月21日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月1日

 2024年6月5日付のCSIS(戦略国際問題研究所)のサイトで、同研究所のボニー・リン上席研究員らによる中国の対台湾作戦に係る報告書が公表された。そこでは、中国が台湾を隔離する可能性が高く、その場合限定隔離と全面隔離の二つのシナリオが考えられるが、台湾の強制統一には軍事封鎖が必要になるだろうと述べられている。

台湾の港を守る台湾軍(ロイター/アフロ)

 この報告は、隔離の動機と利点を明らかにし、中国の作戦につき2つのシナリオを提示する。ここでは「隔離」と「封鎖」を区別し、「隔離」は特定の地域内の海空交通を制御するための法執行主導の作戦、「封鎖」は交通を大幅に制限する軍事主導の作戦と定義する。隔離は、台湾への出入りの条件を中国が設定し、台湾支配の主張を強化することを目的とする。

 隔離には、利点がある。第一は、範囲が限定的で、戦争行為とは見なされない。第二は、実行可能で、脅威だけで海運会社を従わせることができる。第三は柔軟性で、中国が取り得る方法が、追加作戦も含め多々ある。第四に、法執行主導のグレー作戦は、台湾や米国等の対応を難しくする。

 隔離を主導するのは法執行当局、主に中国海警局(CCG)と民間海上安全機関である中国海事局(MSA)である。これらを、中国軍と海上民兵が支援する。軍は、海軍、航空、ミサイル、サイバー等の部隊が展開して台湾を威嚇し、外部介入を抑止し、情報収集・監視・偵察(ISR)を提供する。

 二つのシナリオが考え得る。第一のシナリオは限定的な海上隔離。主要な一つの港(高雄港)を目標とする。「通関検査強化措置」を発表し、全船に中国当局への事前通関申告を要求する。

 沖合に10隻以上の法執行船を配置し、従わない船舶は停止させる。台中港や台北港の沖合にも、法執行船が展開し、また約20隻の民兵船が接続水域内外に配置される。

 中国海軍は、5の艦船群(SAG)を展開して、遠くから台湾を囲む。それは30隻近くになる。台湾に脅威を与え、外国部隊の関与を抑止し、中国の海洋状況把握(MDA)を太平洋まで拡大することを目的とする。


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