辛教授は、多くの党員幹部は高級料理や酒の飲み食いしないことには相応の生活らしくないと思っていただろうと指摘する。党幹部たちは規定によって社会の中間に位置する存在だと多くの庶民に受け入れられるようになるだろうと指摘する。監督なくして実施なし、という一点はとても重要なのだ。
公金での飲み食いは
表面上なくなったように見えたが…
しかし、こうした状況に対して「上に政策あれば下に対策あり」というような状況はないだろうか。(贅沢禁止令の効果は表向き一応表れていると一定の効果を紹介し、しかし実はそれほどの効果は挙がっていないという番組の流れ:筆者)
国有資産監督管理委員会(大型国有企業を監督する省庁。ここのトップで大臣相当の蔣潔敏主任が汚職容疑で逮捕された:筆者)のホームページが一つの事例を公表している。2013年秋の中秋節の前に中糧肉食公司の江国金総経理が同社の新製品を関係者に「試食」させ、プレゼント113品目を送った合計が5万3800元(80万円超)に上り、規律違反行為とされた。江総経理には警告処分が下された。
こうした「試食」という新たな形式による公金での消費は決して例外ではない。監督が強化され、公金での飲み食いは表面上なくなったが、秘密裡に行われるようになったのだ。例えば北京のある会員制ラウンジ(会所と呼ばれる会員制クラブ・レストラン:筆者)での食事の価格には依然として唖然とさせられる。従業員によると、通常988元(1万5000円超)で、15人で普通一人当たり1680元(3万円)だという。高級なものでは6000元超(10万円)というのもあり、こうした食事こそが監督されるべきだ。(前述の湖南料理店は表向きの話でしかなかったという落ちだろう:筆者)
あるラウンジの従業員によると、開業3年あまりだが、ここに来る政府指導者は多いとのことだ。「8項規定」の影響は全くないという。全人代と協商会議という二つの会議(両会)期間中(2013年3月前後のインタビューであろう:筆者)だから接待は多く、皆局長レベル以上だという。
辛教授によると、これまで人々と政府の間では如何に上層部の政策をかいくぐるかという「上に政策あれば下に対策あり」ということが言われてきた。そのため最近出されたいくつかの規定はまさにそれに対処すべく「下に対策あれば上に政策あり」というものだ。下でどのような対策が取られるかを上層で掌握し、こうした政策が出されたといわけだ。
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【解説】
「どうやら習近平政権は本気だ」。官庁や政府系機関につとめる中国の友人たちが口々に言っている。愚痴、諦めのような微妙な雰囲気を感じるが、それでも本当に党や政府の汚職や贅沢一掃に繋がるとは到底思えなかった。そうした中での高級レストランは依然、賑わっているという報道はやはり、という気持ちである。