「萩焼は元々、茶道具を作るために始まったものです。茶道は、千利休で知られるように安土桃山時代に隆盛しました。萩焼はその後、江戸時代後期に衰退していき、危機を迎えたのが明治維新の時で、危機感を持った私の曾祖父である十二代新兵衛は京都に行き茶人として修養を重ね、それを陶芸に生かして、萩焼の命脈を保つことができました。茶道や茶の文化は、日本の文化の根本となっていると思います。例えば、懐石料理も茶懐石から始まったものです」(坂倉さん)
カフェのギャラリーで新たな展開
東京藝術大学で彫刻を学んだ坂倉さんは、基本は大事にしつつ、新たな展開もはじめています。その場の一つとなっているのが大谷さんなどと共につくった「cafe & pottery 音」というカフェです。ここは、地元の陶芸家たちのギャラリーにもなっていて、手頃な価格で萩焼を購入できます。
「私自身、現代に生きる人間として、その中での感覚、必要とされる器を作りたいという思いがあります。『音』はカフェなので、まずはコーヒーやケーキに使う器から作りました。萩焼を知らない人にも手にとって触れていただく場所になっていますし、私にとってもさまざまな試作をする場にもなっています」(坂倉さん)
「かつては、大型バスで来て、温泉に入って宴会をして翌朝帰るというパターンで、街歩きをしてもらうことはありませんでした。でも今は『音』があり、長門湯本温泉の変革を象徴する一つの〝場〟になりました」(大谷さん)
今は、川辺の歩道も整備され、そぞろ歩きを楽しむことができます。そんな時にふらっと立ち寄ることができるのが「音」なのです。「恩湯」や「音」を会場にして9月14日から、5つの窯元、8人の作家が出展する「うつわの秋」が開催されます。ぜひとも、長門湯本を訪ね、とっておきの萩焼を見つけてみてはいかがでしょうか。
山口県長門市深川湯本1261-12 0837-25-4004