自称「出汁マニア」の私は、「出汁をとる生活をしませんか?」と、いつも言っています。そうすると、「出汁をとるのって大変じゃないの?」という反応が返ってきます。こだわろうと思えば、前日から昆布を水につけて……など、色々やることはあるのですが、そうした作法に反しても、気楽に昆布と鰹節をさっと煮出すだけでも、美味しい出汁をとることができます。
明治18(1885)年創業の林久右衛門商店(福岡市博多区)では、鹿児島県の枕崎で鰹節を生産しています。味には、基本的に甘味、酸味、塩味、苦味、そして「うま味」があります。うま味のもとである鰹節は、物語の宝庫でもあるのです。5代目店主の林剛一郎さんと、ご子息の竜矢さんに話を伺いました。
「鰹節の起源は古く、古事記(712年)にも『堅魚』という名前で出てきます。当時は鰹を煮て天日で干すだけでしたが、江戸時代に入って、燻乾法という、薪で燻して製造する方法が考え出されました」(剛一郎さん)
鰹節と似たものとして「モルディブフィッシュ」というものがあって、日本の鰹節の起源であるという説もあるそうです。それでも、鰹節が日本の中で独自に進化してきたことに変わりありません。
「鰹節は、『荒節』と『枯節』に分けられます。鰹の身を捌いて(生切り)、籠に並べ(籠立て)、熱湯で煮熟して、骨抜きをして、燻します(焙乾)。ここの段階までで製品となるのが『荒節』です。鰹節の多くは『荒節』で、力強いのが特徴の出汁です。その後、カビ付けと天日干しを繰り返し、数カ月の手間ひまを掛けたものが『枯節(本枯節)』になり、上品で香り高いのが特徴の出汁となります。
江戸時代、鰹節にカビが発生すると、香りが良くなるということをたまたま発見したことがきっかけで生まれました。カビが発生するということは、発酵食になります。発酵させると風味がより豊かになるのです」(竜矢さん)
季節は梅雨に入り、そうめんが美味しい時期でもあります。そこでお勧めしたいのが、出汁をとって、麺つゆを作ってみることです。
「出汁は昆布と鰹節が基本ですが、そうめんの麺つゆの場合、干し椎茸が必要だと個人的には思います。鰹節に含まれているイノシン酸、昆布のグルタミン酸、そして干し椎茸のグアニル酸です。グアニル酸が入るとうま味が増します」(剛一郎さん)
うま味の「トライアングル」です。ボトルに入っためんつゆも手軽で便利ですが、出汁をとったばかりの麺つゆの香りの高さを知っていただければ、梅雨の鬱陶しさも吹き飛ぶはずです。作った麺つゆは、冷蔵庫に保存しておけば、しばらく使うことができます。
「出汁をとる」話が長くなりましたが、今回、もう一つお勧めしたいのが、『鯛最中お吸物 おめでたい』です。お椀の中を鯛が泳いでいる様子は可愛らしいですし、お祝いごとに贈るにも最適です。「手間をかけて出汁をとろうと言っていたのに」と、感じられるかもしれませんが、プロの出汁を手軽に味わうということでは、お勧めです。
「やはり、商品として伸びているのは、『だしパック』だったり、お湯を注いだらすぐできるフリーズドライの『お吸物』だったりして、その辺りは世相を反映しているのかなと思います」(竜矢さん)
その他、『鰹ふりかけ 金富利』など、日常使いでの「逸品」もたくさんありますので、林久右衛門商店のオンラインサイトをご覧ください。
福岡市博多区麦野5-23-17 0120-516-080