2024年12月22日(日)

勝負の分かれ目

2024年5月10日

 プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が、34年ぶりのボクシング興行となった東京トームで、さらなる輝きを放った。元世界2階級制覇王者でWBC世界同級1位のルイス・ネリ(メキシコ)を6回1分22秒でリングに沈めた鮮やかなTKO劇。4万3000人の観客が現地で固唾をのみ、日本国内ではアマゾンビデオプライムが独占生配信を行ったほか、海外でも映像配信が行われるなど、世界が注目を集めたビッグイベントだった。

井上尚弥はスポーツビジネス界でも世界の”中心”にいる(西村尚己/アフロスポーツ)

 日本ボクシング界では最大規模の興行で、井上にはファイトマネーを含めて10億円超の報酬が入ったという。井上だけでなく、弟、拓真がWBAバンタム級世界王者を防衛したほか、元K―1王者の武居由樹(いずれも大橋)が9戦目でWBO同級王座を獲得するなど大盛況で幕を閉じた。異次元のドーム興行が実現した舞台裏には、井上を軸としたプロボクシングの軽量級は「日本が中心」という時代の訪れが影響している。(現役選手は敬称略)

ビジネス目線でも“ビッグマッチ”

 メインマッチは大波乱の幕開けだった。

 井上が1回、ネリの左フックでプロ27戦目にしてキャリア初のダウンを喫した。大橋秀行会長が「あの時間に倒されたら普通なら無理ですよ。寿命が縮まった」と肝を冷やした場面だったが、井上は「ダメージはさほどなかった」と振り返り、「自分自身、燃え上がるところがあるので、非常にハイテンションになりました」と気持ちが奮い立った。

 2回にダウンを奪い返すと、5回にも2度目のダウンで追い詰める。最後は6回に右の強打で3度目のダウンを奪ってTKO勝利。リングコーナーで雄叫びを上げた。筆者も現地で取材したが、会場は地鳴りのような大歓声に沸いた。

 そんなこの日の東京ドーム興行は、ビジネスの面からも大成功だった。

 映像配信ビジネスによる莫大な放映権料に加え、会場外に設けられたグッズ販売コーナーでは「SOLD OUT」のシールが数多くはられるほど盛況だった。リング上にはNTTドコモやみずほ銀行など、大手のスポンサー企業ロゴが目立った。

試合のグッズは「SOLD OUT」が続出した(筆者撮影)

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