2024年7月16日(火)

勝負の分かれ目

2024年5月10日

 入場料チケットは最高額22万円の席は早々に完売し、最も安い席でも1万1000円という価格にもかかわらず、全席が売り切れた。対価となった劇的勝利に、ファンは大熱狂して酔いしれた。

 報道によれば、歴史的な一戦の翌日、取材に応じた大橋会長は、井上の報酬がファイトマネー、放映権料やスポンサー収入、グッズ販売などの合計で、「過去最高です。(10億円に乗ったかという質問に)全然、いっています」と明かしている。

 それを裏付けるのが、試合前々日の4日に横浜市内のホテルで行われた記者会見後、取材に応じた共同プロモーター、米トップランク社のボブ・アラムCEOの発言だ。

 「日本国内で、あれほどの人気と強さを誇る選手は他にいない。そして、現在、日本は軽量級の中心になっている」

軽量級6階級すべてに日本人王者が君臨

 実際、4万人超の東京ドームを埋めることができる井上の存在は、日本にとってキラー・コンテンツになっている。世界で最も権威あるボクシングの米専門誌「ザ・リング」による全階級を通じたプロボクサー最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」で、日本人初の1位になった井上は、その後にバンタム級とスーパーバンタム級のいずれでも4団体統一の世界王者となった。

 本場・米国では人気が高くないとされる軽量級そのものの価値を高め、ファイトマネーも大きく跳ね上がった。そして、同誌が9日に更新したPFPで、井上は前回2位から約1年9カ月ぶりとなる1位返り咲きを果たした。

 存在感を増していく井上の波及効果は大きく、今回のドーム興行では、日本の軽量級の実力者が大舞台のリングを踏むことができた。実際、この日は井上以外に、日本人対決を含めて5人の日本人ボクサーがリングに上がった。いずれの世界タイトルマッチもアマゾンプライムビデオによって独占生配信され、高い注目を集めた。

 現状、スーパーバンタム級の4本のベルトは井上がすべてを巻き、4団体統一後に返上したバンタム級の世界ベルトも、この日の一戦で、武居がジェイソン・マロニー(豪州)を倒してWBO新王者になったことで日本勢が独占した。いまや、スーパーバンタム級から最も軽いミニマム級まで6階級全てに日本人王者が君臨する。アラムCEOが指摘した通り、軽量級は、井上を頂点に日本が世界の中心に位置する構図が出来上がっている。

 井上の国内人気はすさまじく、アマゾンプライムビデオによれば、ネリを倒したシーンは日本のプライムビデオ市場最大のピーク視聴者をマーク。昨年春にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本が優勝を決めた米国戦を上回った。


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