2024年9月5日(木)

BBC News

2024年9月5日

デンマーク領グリーンランドの裁判所は4日、拘束中の反捕鯨活動家ポール・ワトソン容疑者(73)について、日本が求めている身柄引き渡しに関して決定が出るまで、拘束を延長するよう決定した。

カナダとアメリカの国籍をもつワトソン容疑者は、反捕鯨団体「シー・シェパード」の創設者。米テレビのリアリティー番組「ホエール・ウォーズ」のスターとしても知られる。

日本はワトソン容疑者を、2010年2月に南極海域で日本の捕鯨船に損害を与え、業務を妨害し、乗組員にけがを負わせたとして、2012年に国際手配した。

グリーンランドの警察は、これに基づいて今年7月にワトソン容疑者を、グリーンランドの首都ヌークに船を停泊させた際に逮捕した

この日の法廷では、ジーンズに白いシャツ姿のワトソン容疑者は、弁護団の横で通訳を介して審理に参加。何人かの支援者がこれを見守った。

同容疑者は、「これは世界の人々が見るテレビ番組で日本に大恥をかかせたことへの復しゅうだ」と主張。「南氷洋で何があったのかは、何百時間にもわたってビデオに記録されている」と述べた。

そして、「すべてのビデオと関係記録を見直せば、私に対する疑いは晴れるだろう」とした。

これに対し検察は、ワトソン容疑者は逃亡の恐れがあると主張。裁判官は、10月2日まで拘束を延長すると決定した。

引き渡しはデンマーク当局が判断

ワトソン容疑者は、環境保護団体「グリーンピース」の創設メンバーでもあったが、過激な戦術をめぐって団体側と意見が対立し、1977年に袂を分かった。

2022年にはシー・シェパードを去り、「キャプテン・ポール・ワトソン財団」を設立。

捕鯨船に対して敵対的な行動を取るなどし、物議を醸してきた。

同容疑者は7月21日に逮捕されてから7週間にわたって、グリーンランドの刑務施設で拘束されている。

弁護団は拘束の決定を不服とし、グリーンランドの高等裁判所に上訴している。

グリーンランドはデンマークの自治領で、拘束に関する審理はヌークの裁判所が担当している。一方で、身柄引き渡しに関しては、デンマーク当局が決定する。

日本は先月、デンマークに対し、ワトソン容疑者の身柄引き渡しを要請した。両国は犯罪人引き渡し条約を結んでいない。

同容疑者をめぐっては現在、ヌークの警察が捜査を進めている。結果は今後、デンマーク司法省に提出され、数週間以内に何らかの決定が出されるとみられる。

日本の外務省の溝渕将史・国際報道官は、デンマーク当局からまだ何の連絡も受けていないとBBCに説明。今後も関係国や関係機関への必要な働きかけなど、適切な措置を講じていくとした。

日本は2019年に国際捕鯨委員会を脱退。30年ぶりに商業捕鯨を再開した。ただ、それ以前にも「科学」調査が目的だとして、南極や北太平洋でクジラを捕獲していた。

フランスの大統領府は、ワトソン容疑者の身柄を引き渡さないようデンマークに求めている。伝説的女優から動物愛護活動家に転身したブリジット・バルドーさんも支援を表明。同容疑者の釈放を求める署名は12万筆を突破している。

日本の当局は、クジラを捕らえて食べるのは日本の文化と生活様式の一部だと主張している。一方、動物保護団体などはこれを強く批判している。

(英語記事 Anti-whaling activist Paul Watson kept in Greenland jail

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cx2g5nkxw4eo


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