2024年9月5日(木)

BBC News

2024年9月5日

アメリカは4日、11月の大統領選にロシア政府がメディアなどを使って介入しようとしているとして、ロシア国営メディアの複数幹部を制裁対象に加え、クレムリン(ロシア大統領府)とつながりのある報道機関関係者らのビザ発給を制限するなどした。

米司法省、国務省、財務省はこの日、ロシアによる米大統領選への介入の疑いのある活動に「積極的に対抗」するための協調行動を発表した。

メリック・ガーランド司法長官は、ロシア国営メディア「RT」が、米テネシー州の企業に1000万ドル(約14億3400万円)を支払い、「ロシア政府のメッセージが隠れたコンテンツを作成し、アメリカの視聴者に配信していた」と非難した。

「米組織に対する国民の信頼」を傷つけようとしたとして制裁対象となったのは、RTのマルガリータ・シモニャン編集長ら10人。RT側は関与を否定している。

ガーランド司法長官は、共和党のドナルド・トランプ候補と民主党のカマラ・ハリス候補の対決となる大統領選で、ロシアは自分たちに「好ましい結果」を確保したかったのだと指摘した。

ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は、「ウクライナへの国際的支援を縮小させ、親ロシア派の政策や利益を強化し、ここアメリカの有権者に影響を与える」ことが、ロシアのこの計画の目的だと述べた。

一方で財務省の高官の1人は、RTをはじめとするロシア国営メディアは「自分たちの悪質な活動を支援するために、事情を知らないアメリカのインフルエンサーたちを密かに採用する非道なキャンペーン」に従事していたとした。

ジョー・バイデン政権は現時点までに、以下の対応などを取ったとしている。

・米国内のコンテンツ制作者に報酬を支払い、米国の視聴者に「親ロシア的なプロパガンダと偽情報を流布」していたとして、モスクワを拠点とするRT管理者2人、コスティアンティン・カラシニコフ氏(31)とエレーナ・アファナシエワ氏(27)を起訴

・「米組織に対する国民の信頼を損なうことを目的とした活動」をしたとして、二つの組織とRTのシモニャン編集長を含む10人に制裁を発動

・クレムリンの支援を受ける報道機関の従業員のビザ発給を制限

・米国内の特定の層や地域を標的に、ソーシャルメディア上で「AI(人工知能)が生成した偽りの話をひそかに広める」するために使用された32のインターネット・ドメイン名を差し押さえ

・メディアグループ「ロシヤ・セゴドニヤ」とその子会社5社(RIAノーボスチ通信、RT、TVノーボスチ、Ruptly、スプートニク)を「外国公館」に指定し、米政府への人事情報の報告を義務づけ

・ロシア人ハッカー集団「Russian Angry Hackers Did It」(RaHDit)と関連のあるハッカーの情報提供者に1000万ドルの報奨金を提供

RTは米政府をあざける

カービー戦略広報担当調整官は、クレムリンの偽情報工作の大半はRTが指示し、資金を提供していたと説明。

「RTはもはや、単なるクレムリンのプロパガンダ部門ではない」とカービー氏は指摘した。また、「影響力を及ぼすためのロシアの秘密活動を促進するために、RTが利用されている」とした。

RTはBBC宛ての声明で、「(アメリカは)2016年の使い古された決まり文句を取り戻したいようだ」と、米政府からの非難をあざけった。2016年の米大統領選をめぐっては、米司法省が、選挙選に介入した罪でロシア人13人とロシア企業3社を正式起訴するなど、ロシア介入疑惑の捜査が進められた。

RTは声明で、「人生において確かなことは三つある。死と税金、そしてRTによる米選挙への干渉だ」と、嘲笑的に回答した。

カラシニコフ被告とアファナシエワ被告の起訴状には、2人が利用したテネシー州のコンテンツ制作会社の名前は記載されていない。

しかし、裁判所資料には、「西側の政治的・文化的問題に焦点を当てた、異端なコメンテーターのネットワーク」という記述がある。これは、「テネット・メディア」という企業のウェブサイトに掲載されている企業紹介の文章と一致する。

テネットはソーシャルメディアに何千もの英語の動画を投稿し、有名な右派コメンテーターであるベニー・ジョンソン氏、ティム・プール氏、デイヴ・ルービン氏を自社の「タレント」として宣伝している。

BBCは同社にコメントを求めている。

(英語記事 US accuses Russia of 2024 election interference

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cm2ng74l3mjo


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