2024年9月6日(金)

BBC News

2024年9月6日

ノルウェー南西部沖で死んでいるのが見つかった、ロシア海軍にスパイとして訓練された可能性のあるシロイルカについて、複数の保護団体は4日、この個体は射殺されたのだと主張した。

フヴァルディミールというニックネームで呼ばれていたシロイルカは8月31日、ノルウェー南西部の町リサヴィカ沖で浮いているのが見つかった。その後、検査のため最寄りの港に運ばれた。

シロイルカは寿命が60歳に達することもある。フヴァルディミールは推定年齢約15歳と高齢ではなかった。

保護団体はフヴァルディミールの死骸に弾痕が見つかったとし、「凶悪な犯罪」で撃たれて死亡したとしている。

保護団体「ワン・ホエール」の創設者レジーナ・ハウ氏は、「私たちはフヴァルディミールのために正義を追求していく」との声明をソーシャルメディアに投稿した。

フヴァルディミール2019年にノルウェーの北極海沖で発見され、一躍有名になった。「ワン・ホエール」はこのイルカを追跡するために創設された。

イルカは発見当時、小型カメラを装着するためのハーネスを付けていた。ハーネスには「サンクトペテルブルクの装備」と書かれていた。

そのため、この好奇心旺盛な個体がロシアのスパイ活動をしているのではないかとの憶測を呼んだ。

シロイルカは地元地域で「フヴァルディミール」というニックネームで知られるようになった。これは、ノルウェー語でクジラを意味する「フヴァル(hval)」とロシアのウラジーミル・プーチン大統領をの名前をもじったもの。

保護団体は刑事捜査求める

保護団体のNOAHとワン・ホエールは、ノルウェー警察に刑事捜査を開始するよう申し立てたという。

「(フヴァルディミールの)体中に複数の弾痕があった」と、ワン・ホエールのハウ氏は同団体の公式インスタグラムを通じて述べた。

ワン・ホエールがソーシャルメディアに公開した複数画像には、血がついたフヴァルディミールの体に弾痕と思われるものが複数あるように見える。

「この個体が受けた傷は、非常に気がかりで、犯罪行為を排除できない性質のものだ。ショッキングだ」と、NOAHのディレクター、シリ・マルティンセン氏は述べた。

一方で、フヴァルディミールを長年追跡し、この個体の死骸を見つけた団体「マリーン・マインド」は、「死因を直ちに明らかにできるものは何もない」としている。

「私たちも、(死骸についた)痕跡を目にした。しかし、死因を特定するのは時期尚早だ」と、同団体の創設者セバスチャン・ストランド氏は記者団に語った。

死骸は2日、解剖のため、近くにあるノルウェー獣医学研究所の支部に運ばれた。

研究所の広報によると、解剖の報告書は「3週間以内」に出される見込み。

警察は地元メディアに対し、「捜査を開始する理に適った動機があるかどうかを判断するために」この問題について検討すると説明した。

「マリーン・マインド」と「ワン・ホエール」はこれまで、フヴァルディミールをどう保護すべきかについて対立していた。

「ワン・ホエール」は、シロイルカの生息地としてより自然な環境のノルウェー北部バレンツ海へフヴァルディミールを移し、船舶と衝突するリスクを減らすよう求めていた。

しかし「マリーン・マインド」は、フヴァルディミールの移送には生命の危険がともなうとして、「ワン・ホエール」の案に反対していた。

このシロイルカは2019年4月、ロシアの海軍基地があるムルマンスクから415キロ離れたインゲヤ島沖で、ノルウェーの漁船に初めて近づいた。

北極海に生息するシロイルカがこれほど南で目撃されるのはめずらしく、注目を集めた。

ロシアには、軍事目的でイルカなどの海洋哺乳類を訓練してきた歴史がある。 ノルウェーのニュースサイト「バレンツ・オブザーバー」は、ムルマンスク北西部の海軍基地近くにクジラを飼育する囲いがあることを確認したとしている。

(英語記事 Russian 'spy whale' was shot, animal groups say

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c8xlnyq9292o


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