2024年9月6日(金)

BBC News

2024年9月6日

パリ・パラリンピックは競技8日目の5日、日本勢がメダルを次々と獲得した。車いすテニス女子ダブルスとゴールボール男子では初の金メダル。卓球女子シングルスでも金と銅、陸上男子400メートルと柔道女子48キロ級は銀、ボッチャ混合団体は銅の各メダルを勝ち取った。

8連覇のオランダ勢を破り金メダル

車いすテニス女子ダブルスでは、上地結衣・田中愛美ペアが決勝でオランダのペアを接戦で破り、この種目で日本勢初の金メダルを獲得した。1992年バルセロナ大会から東京大会まで8大会続いていたオランダ勢の連覇をストップさせた。

決勝の相手は、東京大会で金メダルを取り、今大会も第1シードのオランダのディーデ・デ・フロートとアニク・ファン・クートのペア。上地・田中ペアは第1セット、オランダペアの力強いフォアのショットに押され4-6で奪われた。第2セットは上地の強力なフォアと、田中のネット際への絶妙なショットなどで6-6とすると、タイブレークを7-3で取り、セットカウント1-1とした。

勝負は10ポイント先取のマッチタイブレークへ。上地・田中ペアは相手のミスを誘うなどして得点を重ね、9-6とマッチポイントを握ったが、ここからオランダペアが2連続でポイントを奪取。しかし最後は、ネット前で攻めたデ・フロートのボレーがオーバーし、10-8で日本ペアが初優勝を決めた。

試合後のインタビューで上地は、「パワーで勝負してくるオランダペアで、試合中もここまで接戦をできているのは初めてなんじゃないかと思いながらプレーしていたんですけれども、最後まで集中力を切らさずに田中選手がすごく粘り強くがんばってくれたと思います」と話した。

田中は「上地選手はオランダペアに勝利した経験があるので、ペアが田中だったから負けたとは言わせないと思って、最後まで集中力を切らさずにできたと思います」と述べた。

3位決定戦は中国勢同士の戦いとなり、王紫瑩・郭珞瑶ペアが勝って銅メダルを獲得した。

自身の公式サイトによると、上地は先天性の潜在性二分脊椎症で、11歳で車いすテニスを始めた。パラリンピックには高校3年生だった2012年ロンドン大会から出場し、2016年リオデジャネイロ大会で銅メダル(シングルス)、東京大会では銀メダル(同)銅メダル(ダブルス)を獲得したが、金メダルには手が届いていなかった。

パリ・パラリンピック公式サイトによると、田中は中学からテニスをしていたが、高校1年のときに転落事故で脊髄を損傷。車いすテニスを始めた。東京大会でパラリンピック初出場を果たし、グランドスラム(4大大会)でもベスト4に入るなどの成績を残してきた。

ゴールボール男子、初メダルが金

ゴールボール男子では、2大会連続出場の日本が、初のメダルとなる金メダルを勝ち取った。

ゴールボールは、視覚障害のある選手が音の鳴るボールをゴールに向かって投げ得点を競う。

日本は決勝でウクライナと対戦。前半、金子和也と宮食行次のゴールで2-0とリードしたが、その後にペナルティースローなどでウクライナに2点を返され、同点で終えた。

後半は、残り8分で佐野優人がゴールを決めて再び日本がリード。以降は互いに堅い守りで得点を許さず、息詰まる展開となったが、残り2分でウクライナのアントン・ストレリチクがゴール。3-3となり、そのまま延長戦に入った。

先に得点したチームが勝つ延長戦では、双方が相手の放つボールをブロックし続けた。しかし1分半過ぎ、佐野の投げた力強いボールが相手ディフェンスに当たってからゴールラインを越え、日本が4-3で優勝を決めた。

佐野は表彰式後のインタビューで、「まだ実感がないです。でもこの金色というところだけ本当にうれしいです」と喜びを語った。

銅メダルは、3位決定戦で中国を下したブラジルが手にした。

卓球の和田なつきが金、古川佳奈美も銅

卓球女子シングルス(知的障害)では、和田なつきが金メダルを獲得した。卓球のシングルスで日本勢が金メダルを手にしたのは男女通じて初めて。

初出場の和田は決勝で、中立のパラリンピック選手(NPA)として出場しているエレナ・プロコフェワと対戦した。

第1ゲームはカットの効いた相手ボールへの対応に苦しみ、8-11で落とした。しかし和田は、あせらずじっくりとボールを返し続け、チャンスではフォアの強打を決めるなどし、第2ゲームは11-8、第3ゲームは11-4で連取。ゲームカウント2-1と逆転した。

勢いに乗った和田は第4ゲーム、7ポイントを連続で奪うなどプロコフェワを圧倒。最後は相手のサーブがネットし、和田がゲームカウント3-1で勝って優勝を決めた。

和田はインタビューで、「すごいうれしくて、今までの人生にないぐらい感動しています」と話した。

自身の公式サイトによると、和田は中学3年で卓球を始めた。19歳だった2023年には三つの国際大会のシングルスで優勝し、同年のアジアパラ競技大会でも優勝して今大会でのパラリンピック初出場を果たした。

この種目では、2大会連続出場の古川佳奈美も銅メダルを獲得した。

古川は準決勝でNPAのプロコフェワを相手に、第1ゲームを11-5で先取。第2ゲームはプロコフェワが奪ったが、第3ゲームを再び古川が取り、ゲームカウント2-1とリード。勝利まであと1ゲームとした。

しかしプロコフェワはカットを多用して粘り、第4ゲームを奪取。最終第5ゲームも11-6で取り、ゲームカウント3-2で古川を破った。

パラサポWEBによると、古川は中学で卓球部に入り、中学3年のときパラ卓球を始めた。2015年からは国際大会に出場。2018年のパラ世界選手権の女子シングルスで銅メダルを獲得した。

陸上400メートルの福永凌太が銀メダル

陸上男子400メートル(視覚障害T13)では、福永凌太が銀メダルを勝ち取った。(※障害のクラス分けについてはこちら

初出場の福永は決勝で、雨が降るコンディションのなか快走。終盤の直線では先頭を行くアルジェリアのスカンデル・ジャミル・アスマニを懸命に追い、48秒07のタイムで2着でフィニッシュした。

金メダルは47秒43でゴールしたアスマニ、銅メダルはコロンビアのブインデル・ブライネル・ベルムデス・ビジャルが獲得した。

福永はレース後のインタビューで、「400メートルはアスマニ選手には勝つことは難しいかなという思いで、何とか銀メダルをという思いはあった。金メダルを取りたいという思いはすごくあるので、幅跳びのほうでそこを目指して挑戦したいなと思っています」と話した。

パラサポWEBによると、福永は難病の錐体(すいたい)ジストロフィーにより小学4年生のころから目が見えづらくなった。両親の勧めで陸上競技を始め、大学では10種競技をメインに健常者の大会で優勝を目指した。社会人になってパラ陸上に転向し、日本記録を出してきた。

柔道48キロ級の半谷静香が悲願のメダル

柔道女子48キロ級(全盲)では、4大会連続出場の半谷静香が自身初のメダルとなる銀メダルを獲得した。

決勝の相手はウクライナのナタリア・ニコライチク。半谷は開始54秒、ニコライチクに背負い投げで技ありを取られ、2分56秒に背負い落としで一本を奪われ敗れた。

それでも、過去3大会では届かなかったメダルを手に入れた。

日本視覚障害者柔道連盟のサイトによると、半谷は兄の影響で中学で柔道部に入部。弱視だったが一般の生徒たちと一緒に柔道に取り組み、大学に入って視覚障害者柔道に転向した。

この種目の銅メダルは、ブラジルのロジクレイデ・シウヴァ・デ・アンドラデと、トルコのエジェム・タシン・チャヴダルが獲得した。

ボッチャ混合チーム、3大会連続のメダル

ボッチャ混合チーム(脳性まひ)では、日本が3位決定戦に臨み、韓国を8-3で破って銅メダルを手に入れた。この種目での日本のメダル獲得は3大会連続。

杉村英孝、廣瀬隆喜、遠藤裕美の日本チームは、正確なショットで第1、第2エンドを終えて4-0とリード。しかし第3エンドで韓国に3点を奪われ、1点差に迫られた。

それでも日本は落ち着いた投球を続け、後半の第4~6エンドをすべて取って4点を追加。8-3で3位を勝ち取った。

金メダルは中国、銀メダルはインドネシアが、それぞれ獲得した

(英語関連記事 Paris Paralympics 2024 medal results

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c07erx078glo


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