トマス・マッキントッシュ、BBCニュース
イスラエルの特殊部隊が8日夜、シリア国内にあるイスラム教シーア派組織ヒズボラの「ミサイル製造施設」を急襲したと、複数の米メディアが12日に報じた。
レバノンを拠点とするヒズボラは、イランの支援を受けている。
シリア国営メディアは、レバノン国境の北約40キロに位置するシリアの街マスヤフ近郊が急襲を受け、9日に18人が死亡、数十人が負傷したと報じている。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、イスラエル特殊部隊は複数のヘリコプターから降下し、イランが建設した施設内に爆発物を仕掛け、機密情報を持ち出したとされる。
同紙はアメリカや他国の政府関係者の話として、シリア国内の地下軍事施設を破壊するための大胆な作戦の詳細を報じている。
イスラエルによる空爆は、シリアの防衛体制を無力化し、援軍が施設に到達するのを防ぐことが目的だったとみられる。
米ニュースサイト「アクシオス」がこの作戦に詳しいとされる3人の情報筋の話として伝えたところによると、イスラエル空軍の精鋭部隊「シャルダグ」が空爆を行った。
アクシオスはまた、イスラエルは作戦実行の前にアメリカに通告したが、アメリカは反対しなかったと報じている。
BBCはこれらの報道内容が事実か、独自に検証できていない。
ヒズボラへの武器供給阻止が狙いか
イスラエル政府は報道についてコメントしていないが、この急襲作戦は、イランの代理勢力であるレバノンのヒズボラにイランが精密ミサイルを供給するのを阻止するために計画されたものとみられる。
イスラエルは、6年前にもこの施設を攻撃している。昨年10月にパレスチナ自治区ガザ地区で、イランが支援するイスラム組織ハマスとの戦闘が始まってからは、イスラエルはシリア領内に数十回もの空爆を行っている。
ただし、シリア国内にイスラエル部隊を侵入させるのは極めて異例。
この種の作戦としては、ここ数年で最も精密で高度なものの一つとみられる。
シリア保健相は9日、8日夜にハマ県マスヤフ近郊の多数の軍事施設にイスラエルの空爆があり、少なくとも18人が死亡したと述べていた。
イスラエルはガザ開戦以降、ヒズボラや、レバノンやシリアの複数組織との国境を隔てた交戦にたびたび直面している。こうした中で、イスラエルの空爆体制が強化されてきたと報じられている。
イギリスを拠点とし、シリアに情報網をもつ「シリア人権監視団(SOHR)」は、イスラエルは今年に入ってからシリア領内への空爆や砲撃を60回以上行っているとしている。
その結果、武器庫や車両、イランが支援する民兵組織の本部など、約140の標的が損傷あるいは破壊されたという。
SOHRはまた、少なくとも戦闘員208人(シリア政府軍46人、ヒズボラ43人、イラン革命防衛隊24人を含む)が殺害され、民間人22人も犠牲になったとしている。