ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)のラテンアメリカ特派員が、8月18日付け解説記事‘Argentina’s Milei Finds It Hard to Decouple From China’で、反中国的な言動で注目されていたアルゼンチンのミレイ大統領が中国との経済関係のデカップリングは困難と認め、現実的な対応を取っている旨解説している。要旨は次の通り。
中国は6月、数十億ドル相当の通貨スワップ協定を更新し、アルゼンチンの準備金に関する懸念を和らげ、多くの人を驚かせた。
強固な反共主義者のミレイは、米国との緊密な関係を維持しながらも、中国の投資と貿易はアルゼンチンの将来にとって不可欠であると述べ、より現実的なアプローチを取っている。中国は、リチウム採掘から農業に至るまで、主要な経済分野でアルゼンチンとの関係を深めている。
中国はブラジルに次ぐアルゼンチンの第2位の貿易相手国であり、昨年の貿易額は約200億ドル、米国の140億ドルを大きく上回っている。中国のアルゼンチン向け対外直接投資残高は2015年以降500%、30億ドル以上増加したとみられている。
ミレイは、長年の主要投資国である米国は最大の同盟国だと述べ、米国は依然としてアルゼンチンで影響力を保持している。ミレイ政権は、主要新興国によるBRICSへの参加を取りやめ、代わりに北大西洋条約機構(NATO)のパートナー国になることを求めた。
しかし、中国は依然として重要な経済大国であり、ミレイは西側諸国との地政学上の利益と中国との間の商業的利益のバランスを取ることを余儀なくされている。経済学者らは、アルゼンチンの経済危機を好転させるには、中国との経済関係の維持が不可欠だと指摘する。
18年の金融危機以来、国際市場にアクセスできずに債務不履行を繰り返しているアルゼンチンにとって、中国は重要な資金源である。アルゼンチンはラテンアメリカで中国の商業ローンの最大の受取国で、その大半は、現地本部を置く中国工商銀行からのものである。前政権下で、アルゼンチンは中国の一帯一路構想に参加し、アジア投資銀行のメンバーとなり、地元企業が中国との取引に希少なドルの代わりに人民元を使えるための取り決めを確保した。