政治アナリストによると、トランプが11月に再選されれば、アルゼンチンや他の開発途上国に対し、中国との関係を断つよう圧力を強める可能性がある。ミレイはトランプを尊敬しており、昨年12月の就任以来、米国を5回訪問しているが、まだ中国を訪問していない。
ミレイは、中国との政治的な意見の相違が経済関係に影響すべきではなく、貿易問題は基本的に民間が決めることなので、自分が口出しする必要はない、とWSJのインタビューで語った。
アルゼンチンの中国専門家は、中国はこれまでのところアルゼンチンに対し、オーストラリアやリトアニアに対して行ったように外交問題について経済力で報復するのではなく、「戦略的に忍耐強い」アプローチを取っていると述べた。中国がアルゼンチンに対して強硬な姿勢を取れば、アルゼンチンは間違いなく米国の懐に入り込むだろう。
アルゼンチンの国際貿易専門家は、中国は南米の膨大な天然資源を利用する必要があり、アルゼンチンは世界第3位のリチウム埋蔵量を持ち、家畜の飼料として使われる大豆粕の最大の輸出国であり、地政学的にアルゼンチンは明らかに中国と距離を置いているが、中国側のニーズを考えると、アルゼンチンとの貿易を制限するとは考えられず、商業面での影響はないと見ている。
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就任後は鳴りを潜めた過激な言動
昨年の大統領選挙キャンペーンにおいて、過激な言動で注目を集めたミレイの主張の1つが中国指導者を暗殺者と呼び、中国との経済関係を抑制するとの発言であった。これはリバタリアンとしてのイデオロギーに基づくと共に、これまでの左派政権との路線の違いを際立たせるものであった。
しかし、当選後はそのような烈しい中国批判は影を潜め、4月にはモンディーノ外相が北京を訪問し経済関係を強化することで合意し、ミレイは中国との貿易関係を抑制することはなく、通貨スワップも継続すると述べた。
アルゼンチンは、経済関係で中国に対して、金融面、貿易面、鉱業投資、交通インフラ、電力インフラ、ITインフラなどで、既に中国に相当に依存しており、300%近いインフレ、外貨準備の枯渇、経済の停滞と貧困の悪化の中で、中国との経済関係なしには経済再建はとても望めないのが現状である。
6月には、中国側が通貨スワップ協定の延長に応じたことにより外貨準備の最大の財源を確保することができ、貿易面では、中国からの輸入の増大による貿易赤字を埋め合わせるべく、大豆、牛肉、大麦に加えて小麦やトウモロコシの輸出を計画しており両国間の貿易関係はさらに拡大するであろう。