アルゼンチンのミレイ大統領の抜本的な経済改革に関する法案が議会で承認を得られず、大統領令で実施可能な措置に留まっており、インフレの継続や景気の後退が進む中で、国民がどこまで耐えられるか。ウォールストリート・ジャーナル紙コラムニストのオグラディが、アルゼンチン情勢の今後の展望に関し懸念する論説‘Does Argentina’s Milei Fear Dollarization?’を投稿している。要旨は次の通り。
2月、アルゼンチンの下院で664条からなるオムニバス法案が否決されたことを受け、ミレイ大統領は、その改革アジェンダを前進させるため、州知事たちを巻き込む新たな政治戦略を打ち出した。知事の多くは、政府が享受している国民との蜜月関係のお陰で、ミレイを支持してはいる。
特別な利害関係者に支配される議会を迂回し、国民と直接話をするのは賢明な行動だ。しかしそれは、金融安定化を遅らせるという決断を伴っている。
ミレイは、まず政府の財政均衡を優先し、それによってペソがより安定すれば、それに伴ってあらゆる良いことが自然についてくることを期待している。その間、国民は、彼が退治すると約束した高インフレを我慢しなければならない。彼は成功するかもしれないが、リスクを犯している。
アルゼンチンの舵取り役として、市場の道徳性や自由の実利的な意義を主張する人物がいるのは結構なことだ。
しかし、年間3桁のインフレは依然として継続しており、ミレイの選挙公約であるドル化と中央銀行の閉鎖は、現在では中期的な目標となっている。1月に達成された財政均衡は持続可能ではなく、景気は後退しており、市場の予想する年間200%を超えるインフレ率は自慢できるものではない。
外貨準備が90億ドル増加したと言っても、これで自信が急上昇したとはいえない。これは、ペソを刷ってドルを買い、高金利で国債を発行してペソを吸い上げた結果なのだ。
インフレは、貯蓄者、労働者、消費者及び年金受給者に対する隠れた税金だ。ペソの物価が高騰するにつれて、国民の購買力が低下し、国民はより貧しくなっている。しかし、ペソの対ドル価値が下がると、政府のバランスシート上のペソ債務も減少する。