中国によるグリーン・テクノロジー分野におけるラテンアメリカ向けの製品の輸出や投資の急増に対し、米国は安全保障、政治的影響力、不公正な競争の3つの面で懸念を深めているが、有効な対策が打てていない旨、2024年4月10日付の英Economist誌が解説している。
米国は、電動バスから太陽光パネルまで、南米が中国のグリーン・テクノロジーに依存しつつあることを懸念している。中国からの輸出は、3つの技術、すなわち電気自動車(EV)、リチウムイオン電池、太陽光パネルに集中し、21年に南米へのこれらの製品の輸出総額はすでに50億ドルに達し、その後ほぼ倍増している。昨年、南米に輸入された太陽光パネルの99%、EVの約70%、リチウム電池の90%以上が、また、風力発電設備の60%以上が中国製だった。
また、南米におけるグリーン・テクノロジー分野への中国の直接投資が急増している。配電と送電への関心も高まり、チリやペルーを中心に過去5年間の中国の南米におけるM&Aの75%を電力供給事業が占めている。
更に、中国企業は22年EV産業に22億ドルを投資し、同年の南米における中国の直接投資額の35%を占めた。その大部分は、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンでのEVおよびバッテリー製造であった。ブラジルではBYDがアジア以外で最大の拠点として当初は年間15万台を生産するが、30万台まで拡大する可能性があり、メキシコでもBYDは同規模の工場を計画している。
南米の多くの人々は、これらを朗報ととらえ、中国からの投資によって雇用と成長が促進されるということを期待している。昨年訪中したチリ大統領は、中国企業がチリのリチウム工場に2億3300万ドル投資すると発表し、風力タービンのチリでの生産も示唆した。
米国にとっては、3つの懸念がある。第一は、中国のグリーン・テクノロジーが安全保障上の脅威をもたらす可能性である。中国のEVが「遠隔操作でアクセスされ、あるいは無効にされる」可能性について、バイデン大統領は最近調査を命じた。