その結果、太陽光パネル等は大変な過剰生産となり、欧米の製造企業が閉鎖に追い込まれている状態である。極めて低い生産コストが既に実現し過剰生産設備を持つ太陽光パネル等については、中国が海外投資をすることは考えにくく、また解説記事で、中国の投資が雇用や成長を生み出すことにより不安は和らぐと記しているが、政治的思惑で二国間経済政策を決める現在の中国政権の支配下にある中国企業の投資を信頼できるかが疑問が残る。
EVのブラジルとメキシコの動向注視を
EVについては、既にBYDがテスラを抜いて世界最大のEV企業となっている。もし将来、EVが一般的となっていけば、世界の自動車産業の主導権が中国に移りかねない。
米国の自動車産業が衰退する可能性もあり、米国がどのような対抗措置をとるのか注目される。また、今後を見極める上で、南米、特にブラジルとメキシコにおける中国自動車企業の投資の動向を見ておくことも重要だろう。
ブラジルに関しては、BYDが年産30万台を目標とする投資を行ったが、ブラジルはEVの輸入に対する免税措置を段階的に撤廃し、国内製EVの保護の方針を示し、中国等の投資を促している。他方、ブラジルは、現在でもサトウキビを原料とするバイオ・エタノールとガソリンを混合した燃料を用いるフレックス車が8割近くを占めているが、バイオ燃料を用いたハイブリッド車の開発も重視しており、こちらは既に進出済の先進国自動車企業も比較優位を有する技術であるが、EVと他のグリーン車とのバランスをどう調整するのかが課題となっている。
メキシコについては、既にテスラの進出決定と共に中国部品企業も多数進出し始め、BYDが進出すれば、メキシコ生産の部品等を調達することによりUSMCA協定の下で同国で製造するEVを無税で米国に輸出する可能性もあり、米国が懸念を深めている。
当面は、米国がEVを始めとする中国のグリーン・テクノロジー製品にどのような対応をとるかが喫緊の課題といえよう。