2024年6月25日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月14日

 二つ目の懸念は、南米が中国のグリーン技術に依存することにより、台湾問題や資源採掘に至るまで中国が影響力を行使することである。

 米国の最後の心配は、世界を形作るグリーン・テクノロジー産業で、南米や米国の企業や労働者が、政府に支援される中国企業に負けていることだ。3月、イエレン米財務長官は、グリーン・テクノロジー分野における中国の過剰生産は、「世界中の企業や労働者にも打撃を与える」と述べた。

 いずれにせよ欧米に中国に対抗する良い代替策はほとんどない。もし中国の投資拡大が続き現地生産が中国からの輸入を押さえれば不安は和らぐだろうが、グリーン技術における米国の弱点に対する懸念は残るだろう。米国企業が安価で効果的で大量の製品を提供できるようになるまでは、南米の指導者たちに注意を促しても、あまり効果はないだけでなく、むしろ反感を買うだろう。

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不公正な競争は世界的な問題

 この記事は、中国が南米地域に対して太陽光パネル、リチウム電池、EV、風力発電用タービン等を安価で大量に輸出し、また、配電・送電事業やEV生産の投資を拡大している事実を紹介し、米国政府が、(1)安全保障上の脅威、(2)中国の影響力の拡大、(3)不公正な競争による国内産業への打撃の3つの懸念を深めているが、有効な対策が取られていない状況について解説している。

 3つの懸念の内、特に3つ目の不公正な競争による国内産業への打撃についての米国の懸念は、米国や南米に限られず全世界的な問題で、かつ、最も切迫しているといえる。イエレン財務長官は4月上旬に訪中し、中国によるグリーン・テクノロジー分野での中国政府の補助金による過剰投資、過剰生産が米国のみならず世界の企業や労働者に打撃を与えているとの懸念を直接伝え、是正措置を求めた。この種の中国問題は、グリーン・テクノロジー問題に限られないが、米国政府は、関税上の措置等何らかの対策を打ち出すものとみられている。

 習近平政権は、気候温暖化防止という国際的な大義名分を得て、何よりもグリーン・テクノロジーが中国経済を発展させる好機と捉え、15年に重点をそれまでの化石燃料から、再生可能エネルギー重視に大胆に転換したようである。太陽光パネルやリチウム電池の輸出急増は、単に規模の利益や安価な人件費等だけによるものではなく、むしろ中国政府の国内企業に対する巨額な補助金や優遇措置により実現しているとみられている。欧米もこの分野の企業に対して補助金を出しているが、中国の補助金の規模は米国の2倍ともいわれている。


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