2024年10月6日(日)

BBC News

2024年9月18日

ポール・アダムス外交担当編集委員(エルサレム)

恐怖と混乱を植え付けるのが狙いなら、これ以上計算された攻撃は考えられない。

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、通信をポケットベルのような機器に大きく頼っている。

携帯電話は攻撃に使われやすいとして、とっくに使うのをやめている。1996年にイスラエルが携帯電話を使い、パレスチナ自治区のイスラム組織ハマスの爆弾製造者を暗殺したことで、そのリスクは明らかになっている。

17日の攻撃は、その範囲において恐ろしいものだった。

ヒズボラのメンバーらが、スーパーで、路上で、車中で、自宅で、わが子らのそばで、吹き飛ばされた。

爆発は首都ベイルートからベカー渓谷(高原)までレバノン各地で報告された。隣国シリアでも発生した。

イランの国営テレビは、負傷者に在レバノンのイラン大使が含まれていると伝えた。

一つ一つの爆発は小規模だったかもしれないが、致命的なけがを負わせたものもあった。

とりわけ生々しい映像には、理髪店のいすの上で生気がなくなっている、顔面血まみれの若者が映っていた。

ヒズボラとイスラエルは1年近く、低強度の戦争を続けている。そうした中で起きた今回の攻撃は、ヒズボラの人的資源、通信、士気に壊滅的な影響を与えるだろう。

イスラエルはまだコメントを出していない。だが、実行したのがイスラエルなのは疑いない。こうしたことをする動機も能力も、他のグループや国はもっていない。

7月中旬以降、イエメンでの長距離空襲、ベイルートおよびイランの首都テヘランでの暗殺など、洗練された軍事行動や潜入作戦が続いており、今回はその最新のものだ。

ポケベル型の機器を使った攻撃は、イスラエルによる大規模な作戦の前触れなのだろうか?

ヒズボラのメンバーが多数負傷し、重要な通信網が大規模かつ恥ずかしいほどに寸断されていることを考えると、イスラエルは明らかに、この瞬間を利用したいと考えるだろう。

イスラエルの指導者らはここ数日、レバノン国境沿いの軍事的な現状を変えたいという願望をちらつかせている。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は15日、イスラエルには「北部国境におけるパワーバランスの変化」が必要だと発言した。

イスラエルでは何万人もの国民が、1年の大半を自宅から離れて過ごしている。パレスチナ自治区ガザでの戦争が始まり、まもなくしてヒズボラがイスラエル北部にロケット弾を発射するようになった時点で、イスラエル政府は危険度の高い北部のコミュニティーの住民らに避難を指示した。

一方、レバノンでも、何カ月も続くイスラエル軍の報復空爆によって、多くの住民らが自宅を離れざるを得なくなっている。

イスラエルのネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相は16日、同国を訪れた米政府高官に対し、自国の安全確保のためならイスラエルはどんなことでもする準備ができていると警告した。

イスラエル政府は、ガザでの戦争の目的に、イスラエル人が自宅に戻ることも含まれると初めて表明した。これは紛争拡大の可能性を示すもので、レバノン南部に緩衝地帯を設置するための限定的な地上侵攻も考えられる。

いまのところ、大規模な軍事侵攻で必要となる兵員や兵器の増強は、その兆しが見られていない。だが、17日にあった攻撃は、危険かつ新たなエスカレーションを意味する。

ヒズボラが何らかの形で対応せざるを得ないと感じていることは、ほぼ間違いない。

(英語記事 Pager explosions will devastate Hezbollah's morale and manpower

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cjwd0yje5e5o


新着記事

»もっと見る