コロナ後遺症に対して、精神科医は心身の両面を診る。コロナ後遺症の患者は、精神的に打ちひしがれている。倦怠感が強く、思考力・集中力を奪われ、絶望的な気持ちでいる。
そもそも人に理解されていない。「甘えではないか」、「怠けているのではないか」、「何か不満があって、それで大げさに病気のふりをしているのではないか」などと言われる。
絶望に拍車をかけるのが、医師たちの腰の引けた対応である。症状を訴えれば訴えるほど、忌避的な表情をする。
検査には応じるが、その後の診察日に、「検査しました。特段の異常は見いだされませんでした」といったお決まりの言葉が返る。最後に、「当院でできる治療法はない」と言って、治療終止を宣告されてしまう。なお症状を訴えようとすれば、「ストレスではないでしょうか」、「精神的な問題でしょう」という理由をつけて、「メンタルクリニックを受診するように」と促される。
そのようにして、筆者のところにも、多くのコロナ後遺症の患者が紹介されてきた。精神科医としては、依頼を受けたら、お引き受けする。ただし、条件付きである。「内科的なところは貴院にてフォローアップしていただくことを条件に、精神医学的側面に限定して担当させていただきます」との留保をつける。
コロナ後遺症は「こころの病」ではなく、「からだの病」
コロナ後遺症の患者さんがお越しになれば、開口一番申し上げる。
「あなたは、『こころの病』ではありません。『からだの病』です。コロナ後遺症は、からだがだるくなる病気。だから、からだを治しましょう」と。
コロナ後遺症の特徴は、動くとすぐ疲れてしまう点である。咳、喀痰(かくたん)、頭痛、微熱など上気道炎の症状もないわけではないが、それ以上に疲労感・倦怠感がはなはだしい。専門用語で、「労作後倦怠感」(PEM: Post-exertional malaise)と呼ぶが、これには筋力の低下も預かっている。
ここで、少し注意していただきたい。「筋力の低下」というのは、一見すると奇異ではなかろうか。新型コロナ感染症は呼吸器疾患である。筋肉の病気ではない。
本来、筋肉の疾患ではないはずの呼吸器疾患が、なぜ、筋力低下をもたらすのか。そこには、安静の長期化がもたらす筋萎縮、筋量減少がある。
コロナ後遺症は、上気道炎の症状だけではない。長く休むことがもたらす、二次症状も加わっているのである。