価格設定についても、工場に適正な利益が落ちるように配慮した。工場側に希望額を出してもらい、ファクトリエはその倍の値段を販売価格にするというものだ。工場側は「値段なんてこれまで付けたことがない」と最初は戸惑っていたが、「再生産に必要な利益を出すための値段を言ってほしい」と話した。
起業にあたっては、もう一つ手を打った。ファクトリエのコンセプトは「モダンベーシック」。来年も再来年も飽きが来ずに着続けられるというもの。そのためには、「自分の嗜好では駄目で、プロの目に見てもらう必要がある」。グッチのときと同じく、有名ファッション誌の編集長など業界の著名人に、何通もの手紙を書き、ファクトリエの監修者になってもらった。
自己資金50万円と、クラウドファンディングで集めた114万円で、12年10月に事業を開始。1年の売上額は5000万円を超えた。商品もカーディガン、ネクタイ、ポロシャツ、ジーンズ、カットソーなど種類を増やした。提携する工場は「ホームページなど持っていないことが普通」。タウンページを見たり、業界団体に電話をかけたりして、工場に自ら足を運んで説得にあたる。この1年で「210の工場を回った」。
「製品の点数は少なくても、手がけるからには120点を目指す日本の縫製工場が好き」だという山田。工場と二人三脚で「Made in Japan」の縫製品を作り続ける。
来期は1億円、20年には100億円の売上目標を掲げ、18年頃には新規上場(IPO)も目指す。
産地証明のある宝飾品 ハスナ
HASUNA(ハスナ、東京都港区)は、8000億円規模と言われる国内の宝飾品市場で、フェアトレード(公正貿易)の考え方に基づいた「エシカル(倫理的な)ジュエリー」の制作・販売を手掛ける。
こだわるのが産地証明だ。通常、宝石や貴金属は、採掘から消費者の手元に渡るまでに複数の業者を経由するため産地証明が難しく、買い取り側も産地にこだわると安定供給を妨げるため、普及していなかった。
しかし、社長の白木夏子(32)は「見えない世界、隠されている世界を見える化しなければならない」と考え、婚約指輪や結婚指輪などに、児童労働や有毒化学物質が禁止されている鉱山のゴールドなどを使い、産地証明を付けて販売する。
産地の選定では、白木自ら採掘現場を訪れ、フェアトレードの仕組みを作り出す。例えば、ボツワナではダイヤモンド1個当たり25ドルをNGO団体に寄付し、コロンビアではゴールドを市場価格より2%高く採掘者から買い取る現地のフェアトレード企業と組んだ。