エコノミスト誌の9月7日号が、米国はウクライナが米国から供与された兵器でロシア領内奥深くの軍事目標を攻撃することを禁ずる制限を課しているが、この制限に対するウクライナの苛立ちが強まっている、と報じている。要旨は次の通り。
バイデン政権がロシア領内の標的に米国が供与した兵器を使用することについて課した制限に対して、ウクライナの苛立ちが日毎に強まっている。
8月26日と27日にロシアが都市とエネルギー・インフラに対して大規模なミサイルとドローンによる攻撃を行ったが、ウメロウ国防相とイェルマーク大統領首席補佐官は米国の政策の変更を求めるため代表団を率いてワシントンを訪問した。報道によれば、ウクライナ側は米国のミサイルで特定の数の重要目標を攻撃する許可を求めた。
米国の兵器の使用禁止について過去に理由とされたのは、クレムリンによるエスカレーションの引き金となり、ウクライナにより大きな害を為し、ロシアが核兵器の使用に訴える結果ともなりかねないということであった。しかしながら、プーチンの核兵器使用の脅しは、文字通り脅しであることが露呈している。
最近になって、ウクライナに制約を課す新たな理由が色々持ち出されている。バイデン政権は将来のいずれかの時点におけるモスクワとの関係の「リセット」を危険に晒したくないのだと示唆する当局者もいる。
バイデン政権は、英仏が供与したStorm Shadow/SCALP空中発射型巡航ミサイルを、両国がウクライナにウクライナ領域外で使うことを認めることを止めさせた。
ホッジス元欧州米陸軍司令官は、「一貫した言い逃れ作りであり、ミスリーディングであるとともに不正確」だと言う。例えば、ATACMSの基数が十分でないことが抑制要因の一つとされるが、ATACMSは30年以上も前に採用され、米国は少なくとも2500基のストックを有している模様だ。
適当な十分な数の目標がないという主張にも同様疑問がある。戦争研究所(ワシントンのシンクタンク)によれば、ロシア奥深くの軍事目標に対する長距離攻撃はロシアの軍事能力を劣化させる上で極めて重要としつつ、ATACMSの射程内に250の「対象物」があるとしている。