2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月17日

 米国はAUKUSの約束と米国の所要に見合う潜水艦建造をしておらず、米軍基地は中国の台湾侵攻を破るに必要な防空システムと長距離ミサイルを持っていない。また、中国のフィリピン船舶への虐めは止まらない。

 本国周辺でもベネズエラの独裁者は選挙結果を改ざんした。石油制裁を緩和したバイデン政権のナイーブさが露呈した。メキシコは権威主義に傾斜しているが米国は抗議していない。キューバは革命を輸出している。難民が押し寄せ全土の重荷になっている。

 新反米連合が形成されている。イランはロシアにドローンを供給し、ロシアはイランに核兵器技術を提供するかもしれない。中国はロシアを支援しロシアは中国と海軍合同訓練を実施している。北朝鮮もロシアに武器を供与し中国は北朝鮮を守護する。

 全ては1930年代以降最悪の世界秩序劣化と米国の影響力低下を招いている。しかしバイデンは平和な時代の大統領のような発言と行動を続けている。

 任期中に毎年国防費削減を提案したのは責任放棄の最たるものだ。現在の嵐への対応は危険で、まず米国の抑止力回復が必要だが、それには一層の軍事力と政治的決意が必要だ。次の大統領はバイデンの失敗政策を放棄しなければ、世界的紛争に破滅的な結果をもたらす。

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あまりに弱かったバイデンの「抑止力」

 現役の大統領に対する社説としては、非常に厳しいものだ。

 まず、書いてある内容自体に大きな違和感はない。確かにバイデン政権は抑止において余りに弱い。

 代表例はここでも取り上げられているウクライナ戦争への対応だ。プーチンが核の恫喝をするなら、それを最大限活用して国際社会でプーチンを追い込み、それを背景に具体的な軍事的圧力をかけて抑止を利かせる、と言うのが本来の米国のはずだ。それが、ロシアとの核戦争を避ける、ということが最大の目標と化し、ロシアを刺激することはやらない、という対応に終始する。換言すれば、正に、抑止すべき対象であるロシアの恫喝に、米国が逆に抑止されているという、誠にみっともない対応だったと言わざるを得ない。


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