2024年10月16日(水)

BBC News

2024年10月16日

バーンド・デブズマン・ジュニア、ブランドン・ドレノン、BBCニュース(ワシントン)

アメリカ大統領選挙まであと数週間となった今、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領は、黒人とラティーノ(中南米系)有権者の支持獲得に向けた取り組みを強化している。どちらのグループでも明確なリードを保ってはいるが、11月5日の投票日に票を投じさせるにはハリス候補にさらなる努力が必要だと、一部の民主党員は警告している。

その理由の一つは、最近の世論調査で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が、2016年と2020年に続き、黒人およびラティーノ有権者の支持拡大に成功しているとされているからだ。

米紙ニューヨーク・タイムズと調査会社シエナが行った支持率調査では、ハリス候補を支持すると回答した黒人有権者は78%と、直近の選挙で民主党候補者を支持した90%よりも低い結果となった。この低下の大半は男性有権者によるものだった。

これは、僅差で決着がつきそうな選挙戦では極めて重要な意味を持ち得る。また、この世論調査が外れたとしても、激戦州では黒人やラティーノ有権者のわずかな増加が、最終的に結果を左右する可能性がある。

たとえばアリゾナ州では、11月5日の投票者の4人に1人近くがラティーノになると予想されており、近隣のネバダ州でも20%近くに上る。また、もう一つの重要州であるジョージア州では、黒人の有権者が全体の約30%を占めている。

では、これらの有権者層においてトランプ候補が支持を伸ばしているとされるのは、どういう理由からだろうか?

経済が争点の中心に

経済、特にインフレと生活費が、有権者の大半にとっての主要な関心事となっている。

これは多くの黒人とラティーノ有権者にも当てはまることで、ニューヨーク・タイムズは、両グループの大半が現在のアメリカ経済の状況に不満を抱いていると指摘している。

その中の一人、ヴァージニア州在住のクエンティン・ジョーダンさん(30)は、かつては民主党のバラク・オバマ元大統領に投票したが、2016年にトランプ候補が初めて全国的な政治の舞台に登場して以来、トランプ候補に投票していると話した。

「インフレによって、家族の生活に必要な日用品を調達することがほぼ不可能、あるいは非常に困難になっている」

「人々が、価格上昇から受ける圧力を嫌だというのは、それを実際に感じるからだ。私もどんどん生活が困難になっている」

「赤」の共和党と「青」の民主党が入り混じる「紫」のネヴァダ州は、ラティーノ住民を多く抱えている。ラスベガス在住のリディア・ドミンゲスさんは、多くのラティーノ住民は「トランプ政権下の経済を覚えている」と述べ、現在の経済状況への懸念が、トランプ候補を支持することについての「偏見をもはやなくしている」と付け加えた。

「みんな生活していけない。それが大きな理由だ」と、ドミンゲスさんはBBCに語った。「彼(トランプ候補)を支持することはもはやタブーではない」。

ハリス候補を支持する有権者の中にも、「家計」の問題がこのコミュニティーで有権者を右傾化させた要因だとを認める人がいる。

ネヴァダ州で、以前は共和党員として投票していたが、現在はハリス候補に投票するつもりだというディエゴ・アランシビア氏は、「私のコミュニティーでは多くの人が支持を変えている。経済だけを理由に、多くの人がトランプに投票するだろう」と語った。

「そういう人たちは、決して彼と一緒にビールを飲みたいとは思わないだろうが、彼には自分たちを経済的に引き上げる力があると考えている」

移民と国境の問題

より幅広いアメリカの有権者と同様、黒人ラティーノの有権者も、ジョー・バイデン政権による移民問題と米メキシコ国境の管理について懸念を表明している。

厳格な国境管理と数百万人の不法移民の国外追放は、トランプ候補の選挙活動における主要政策となっている。

トランプ陣営はまた、バイデン政権下、ひいてはハリス候補の下では国境が無秩序で危険だと感じている、一部の黒人およびラティーノ有権者からも共感を得ている。

テキサス州の元民主党員で、今はトランプ候補の支持者だというローランド・ロドリゲスさんは、近年記録的な数の移民が国境を越えている現実が、たとえ今年その数が減少するとしても、一部の有権者の心には重くのしかかっていると述べた。

「私は国境のすぐ近くに住んでいるが、カマラとバイデンの下で起きたような大惨事をこれまで目撃したことは一度もなかった」と、ロドリゲスさんは言った。

前出のヴァージニア州のジョーダンさんも、亡命希望者やその他の外国人が、「黒人コミュニティーが何十年も求めてきた資源を奪っている」と述べた。

これについては、トランプ候補も14日に直接言及している。トランプ候補は、不法移民の「侵入」が、黒人およびラティーノのコミュニティーに「大きな負の影響」を及ぼしていると述べた。

さまざまな社会問題

政治学者のクアドリコス・ドリスケル教授は、特に黒人の男性有権者が、民主党による社会問題の「受容」は自分たちの意見と異なっているとして、民主党から離れていったと指摘する。

「男らしさに対する攻撃があったという認識があり、それが何を意味するのかという問題がある」とドリスケル教授は言う。「一部の黒人男性有権者が怒りをぶつけているのは、まさにそれだと思う」。

「必ずしもその政党そのもの(に反対)というわけではない」、「その政党の有権者と、人間の性とジェンダーに関する表現が問題だ」。

ドリスケル教授のこの指摘は、サウスカロライナ州在住の黒人有権者、クラレンス・ポーリングさん(49)に当てはまる。

理髪店のオーナーで元警察官のポーリングさんは、共和党の見解のほうが、性別や性的指向に関する自分の宗教的価値観により近いと述べた。

ポーリングさんは民主党について、「自分勝手な問題設定をしてはいけない」、「もし国全体を導くつもりなら、正しい方法で導くべきだ」と話した。

トランプ候補は14日、ペンシルヴェニア州での集会で、黒人とラティーノ有権者の支持を取り付けようとしていた。同じ日にハリス候補も、「黒人男性のための機会アジェンダ」と名付けた政策提案のリストを発表し、自身の取り組みを強化した。

さらにハリス候補は今週、主要な激戦州の都市で黒人起業家らと会合を持ち、デトロイトでのイベントでは、ラジオ司会者のシャーラメイン・ザ・ゴッドさんなど、人気の黒人メディア関係者と対談する予定だ。

一方、トランプ候補は最近の世論調査に直接言及した。

「黒人とヒスパニック系(の有権者)の支持率は天井知らずの勢いだ。天井知らずだ。私はそれを気に入っている」

(英語記事 Harris courts black and Latino voters as polls suggest Trump gains

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0lw5374xzpo


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