2024年10月16日(水)

BBC News

2024年10月16日

反戦をテーマにした絵を娘が描いたあと、ロシア軍をおとしめた罪で服役していたロシアの男性が、刑務所から釈放された。この父子については世界中で報じられ、注目されていた。

アレクセイ・モスカレフ氏の娘マーシャさんは2022年、学校で「戦争反対」と「ウクライナに栄光あれ」というフレーズを付けた絵を描いた。学校はこの絵について警察に通報した。

モスカレフ氏はその後、ソーシャルメディア上でロシア軍を繰り返し批判しおとしめた罪で起訴され、2023年3月に禁錮2年の判決を受けた。

今月15日にインターネット上で共有された映像には、トゥーラ州の刑務所を出た後、囚人服を着たまま娘と抱き合うモスカレフ氏の姿が映っている。

モスカレフ氏の釈放は、同氏の弁護士を務めた、ロシアの独立系人権団体「OVD-インフォ」のウラジーミル・ビリエンコ氏によって伝えられた。

モスカレフ氏は、服役中に2カ月間、懲罰房で過ごしたと述べた。

「それはまさに拷問室だった。ただの拷問室だった。広さは横2メートル、縦1メートルだった。それがどういうことかわかるだろうか」

「最初は私一人が座っていたが、次に2人目が入れられた。2メートルと1メートルの広さの部屋に2人で座っていた」

「床は腐っていて、いたるところにネズミがいた。下水道から、そしていたるところから、巨大なネズミがやってきた」

ロシア連邦刑務当局はすぐにはコメントを出しておらず、ロイター通信からのコメント要請にも応じていない。

娘のマーシャさんは12歳だった2022年4月、学校で反戦の絵を描いた。そこには、「ウクライナに栄光を」と描かれたウクライナの国旗と、ロシアから飛んでくるロケット弾、そして「戦争反対」と描かれたロシア国旗が描かれていた。

モスカレフ氏によると、学校がこの絵について警察に通報。その後、モスカレフ氏はSNSに投稿した反戦コメントについて罰金を科された。

同年12月には自宅の家宅捜索が行われた。すでに同様の違反行為で有罪判決を受けていたモスカレフ氏は、刑法に基づいて起訴された。

マーシャさんはモスカレフ氏から引き離され、児童施設に預けられた。その後、別居していた母親の保護下に入った。

モスカレフ氏は2023年3月、禁錮2年の実刑判決を受けた。

OVD-インフォによると、モスカレフ氏はこの時、自宅軟禁を逃れて隣国ベラルーシに逃亡したため、判決言い渡しの際には出廷しなかった。

しかしその後、ベラルーシ国内で拘束され、翌月にはロシアに送還された。

モスカレフ氏が住んでいたロシア・イェフレーモフのオルガ・ポドリスカヤ町議は、昨年BBCの取材に応じた際、「ショックを受けている」と語った。

「自分の意見を述べただけで実刑判決を受けるなど、ひどい話だ。2年の実刑判決など悪夢だ」

最近の国連報告書によると、2022年2月のウクライナへの全面侵攻開始以来、ロシアでは人権状況が深刻に悪化している。

国連はこの報告書で、警察による暴行、独立系メディアに対する広範な弾圧、懲罰的な新法を利用した反体制派に対する根強い言論封殺の試みを、詳細に調査している。

報告書が取り上げている事例の中に、反戦詩を朗読したという理由で7年の実刑判決を受けたアルチョム・カマルディン氏のケースがある。当局は、この行為を「憎悪の扇動」とみなした。

報告書はまた、ウクライナ紛争に関する政府の見解を、「重要な対話」という名称の必修科目を通じて子供たちに広めようとしていると、ロシア政府を非難している。

「このような授業を拒否する子供とその親は、圧力や嫌がらせの対象となる」と、報告書は指摘している。

(英語記事 Father of girl who drew anti-war picture freed from Russia jail

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cz04z7vr3zko


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