英国家統計局(ONS)は15日、9月までの1年間のインフレ率が1.7%だったと発表した。市場予想を下回り、過去3年半で最も低い水準となった。
航空運賃やガソリンの値下げがインフレ率低下を後押しした。
これにより、イギリスのインフレ率はイングランド銀行(中銀)が目標とする2%を下回った。政策金利のさらなる引き下げへの道が整ったかっこうだ。
9月のインフレ率は通常、翌年4月から適用される社会保障の基準となる。これにはユニバーサル・クレジット(低所得者向け給付制度)や障害者年金、介護年金などが含まれる。
ONSによると、9月のガソリンとディーゼル価格は、前年同月比で10.4%安と大幅に下がった。
航空便の国内線、欧州線、長距離線の値下がりも、インフレ率の低下につながった。運賃は通常、夏の繁忙期後に下落するが、今回は通常よりも大幅に下落した。
一方で、牛乳、チーズ、卵、ソフトドリンク、果物などの価格が急騰し、食品および非アルコール飲料の価格上昇ペースが加速したことで、家計は打撃を受けた。
ダレン・ジョーンズ財務次官は、物価上昇率の全体的な低下は「何百万人もの家庭にとって朗報」だと述べた。
「しかし、労働者を守るためにはまだやるべきことがたくさんある。だからこそ、私たちは成長を取り戻し、経済の安定を取り戻すことに重点的に取り組んでいる。そうすることで、変化という約束を実現できるからだ」
イギリスでは30日に秋季予算が発表される。
レイチェル・リーヴズ財務相は、400億ポンド規模の増税と歳出削減を検討している。
労働党新政権初の予算案をまとめるリーヴズ財務相は先に、閣僚らに「歳出、福祉、税金に関する難しい決断」が迫られると警告した。
リーヴズ氏は、政府部門の実質的な削減を回避するために、400億ポンドの予算を回収する手立てを考えている。
11月にさらなる利下げか
英投資会社ハグリーヴス・ランズダウンの資金・市場部門責任者、スザンナ・ストリーター氏によると、インフレ率が大方の予想を下回る中、市場ではイングランド銀行が11月に金利を引き下げるとの見方が「どんどん膨らんでいる」という。
イギリスの政策金利は現在5%。ロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー価格上昇も一因となり、インフレ率が急上昇したため、イングランド銀行は2021年末から着実に金利を引き上げてきた。
今年8月に最初の引き下げが行われ、先月は見送られたが、KPMGイギリスのチーフエコノミスト、ヤエル・セルフィン氏は、9月のインフレ率低下は政策立案者にとってさらなる引き下げを行うのに「十分」だと述べた。
一方でセルフィン氏は、10月に家庭の光熱費が約10%上昇することで、インフレ率が再び上昇する可能性が高いと述べた。
(英語記事 UK inflation in surprise fall to lowest rate in three years