2024年10月20日(日)

BBC News

2024年10月19日

ラシュディ・アブアルーフBBCガザ特派員(イスタンブール)、ヤロスラフ・ルキフ記者、パトリック・ジャクソン記者

パレスチナのガザ地区で18日、イスラエル軍が北部ジャバリアの避難民キャンプを攻撃し、少なくとも33人が殺害されたと、イスラム組織ハマス運営の保健省が明らかにした。少なくとも21人の女性や子供が犠牲者に含まれるという。多くの住民が避難する同キャンプを、イスラエルは2週間以上にわたり包囲し続けている。18日の攻撃について、イスラエルはただちにはコメントしていない。

ハマス運営の広報当局は、イスラエルによる18日のジャバリア空爆で少なくとも33人が殺害されたほか、85人が負傷したとしている。重傷者も含まれるという。避難民キャンプ内で3家族が暮らしていた建物が破壊され、大勢ががれきの下敷きになっているため、死者数は50人に達するおそれもあるという。

この発表内容の客観的検証はできていない。地元の情報筋によると、通信もインターネットも途絶しているガザ北部は事実上、孤立状態にある。

ソーシャルメディアで拡散している動画には、現地のアル・アウダ病院の中庭に、白い衣でくるまれた遺体が並べられた様子に見える映像が含まれる。BBCはこの内容を検証できていない。

アル・アウダ病院のモハマド・サルハ院長代行は記者団に、多数の死傷者が一気に運び込まれ、病院は対応しきれない状態だと話した。

「救急隊員は今もジャバリアから、殉教者と負傷者を運び出そうとしている」、「病棟は満員で、負傷者の多くは床の上で手当てを受けている」と院長は話した。

ジャバリアの避難民キャンプには約40万人が避難しているものの、わずかな食べ物と水しかない状態で2週間以上もイスラエル軍の包囲によって、中に閉じ込められている。

ジャバリア中心部に戦車 家屋攻撃

18日のジャバリア空爆に先立ち、ガザの保健省はすでにガザ地区全体で18日に少なくとも39人が殺害されたと発表していた。その多くはジャバリアで被害に遭ったという。

現地住民はロイター通信に、イスラエル軍の戦車が空と地上からの援護射撃を受けながら、ジャバリアの中心部に進み、多数の家屋を連日破壊しているのだと話した。

さらに18日午後には、ジャバリアと2つのガザ北部の町で通信が遮断されたという。

ガザ地区における国連人道問題調整事務所(OCHA)の所長、ゲオルギオス・ペトロプロス氏は同日、BBC番組「ニューズアワー」に対して、ジャバリアにいる住民は「悲惨な状況」に耐えているのだと話した。

「あの場所の民間人にとって、いかに状況が劣悪で危険か、どんなに警鐘を鳴らしても足りない」、「ガザ北部にいる住民は、特にイスラエル軍に包囲されたジャバリア・キャンプにいる人たちは、激しい砲撃のさなか、悲惨としか呼べない状況の中で生き延びようとしている」と、ペトロプロス氏はラファからBBCに話した。

イスラエル軍は17日、白兵戦で複数の戦闘員を殺害し、軍事インフラを破壊したのだと説明している。

ペトロプロス氏はさらに、シンワル氏殺害をきっかけにガザ北部への援助搬入が従来より容易になるとは思えないとBBCに話した。

今年10月になってガザ北部にはわずかな援助物資しか届いていない。イスラエルは18日に、食料や水、医薬品やシェルター用の備品を含む援助物資を乗せたトラック30台をガザ北部に向かわせたとしている。しかし、現地当局はロイター通信に対して、ジャバリアをはじめ特に被害の甚大な地域に、援助物資は届いていないと話している。

「自分たちが今いるガザのこの場所から、和平への道筋は見えない」とペトロプロス氏はBBCに話した。「いまだに病床不足のせいで病院の床で子供たちが死んでいる(中略)燃料を病院に運ぶことが許されないため、透析患者たちが死んでいる」。

イスラエルは、援助物資のガザ搬入を自分たちは阻止していないと、再三主張している。しかしアメリカ政府は、ガザに入る人道援助が拡大しないならば、アメリカの軍事援助の一部を打ち切る可能性もあると警告している。

イスラエルのアミハイ・チクリ・ディアスポラ問題担当相はBBCの同番組で、イスラエル軍がガザ北部の一部を「封鎖」したと話した。

「我々は部隊を使って封鎖している。それによって、民間人が安全地帯へ脱出できるようにした。そして、封鎖区域に物資が入らないようにした。というのもそこは極めて限定的な区域で、ハマスがそこで統治と軍事能力を立て直そうとしているからだ」と、チクリ氏は述べ、これは「国際法のもとで合法だ」と強調した。

ガザ停戦はレバノン停戦より困難とバイデン氏

ジョー・バイデン米大統領は18日、レバノンで停戦に近づく可能性はあるものの、パレスチナのガザ地区での停戦はそれよりも難しいと発言した。英独仏の首脳と会談したベルリンを離れる際、記者団に話した

バイデン大統領はベルリンの国際空港から出発する際、「レバノンでの停戦に向かっていく可能性はあると(4カ国首脳は)考えている。それはガザではもっと難しいが、何かしらの結果が必要だと合意した」と述べた。

イスラエル軍は16日、ハマス最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏をガザ地区南部で殺害。身元確認の上、殺害を17日夜に発表した。昨年10月7日のイスラエル襲撃作戦の中心的人物がシンワル氏だとされていることから、その殺害がガザ停戦につながる可能性を期待する声も一部で出ていた。

しかし18日には、ハマスのハリル・アル=ハイヤ副代表が、シンワル氏の死を認めるとともに、その死によってハマスは一層強くなるだけだと強調した。副代表は、イスラエルが戦争を終わらせてガザから撤収しない限り、自分たちが拘束し続けるイスラエルの人質を解放することはないと述べた。

シンワル氏が指揮したとされる昨年10月のイスラエル南部襲撃で、ハマスは約1200人を殺害し、251人を人質にしてガザへ連行した。ハマス運営の保健省によると、それから1年以上続くイスラエルの攻撃で、ガザでは少なくとも4万2500人が殺害された。

ガザ地区では、昨年10月7日にイスラム教組織ハマスがイスラエル南部を襲撃したのを機に、イスラエルによる全面的な軍事作戦が続き、イスラエル軍は現在、同地区北部を集中的に攻撃している。

レバノンでは現在、同国を拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルが戦闘を重ねている。ヒズボラはイランの支援を受けている。

レバノンでも地上侵攻を続けるイスラエル軍は、18日にはヒズボラ戦闘員を約60人殺害し、指揮拠点を空爆で破壊したとイスラエル軍は明らかにした。

これに対してヒズボラは、イスラエル北部のハイファや北部各地にロケット砲を打ち込んだと発表した。

シンワル氏殺害の状況は

イスラエル軍はガザ南部ラファ市内でシンワル氏を殺害した状況について、同氏が隠れていた建物を「戦車が砲撃」したのだと発表。この建物を攻撃する前には、「テロリスト」の集団と部隊の間に銃撃戦があったのだと説明した。

イスラエル・テルアヴィヴの国立法医学センターでシンワル氏の遺体を検視した法学者チェン・クーゲル医師は、死因は頭部を撃たれたことによる「重度の外傷性脳損傷」だと米CNNに話した。

クーゲル医師は、遺体にはほかの要因による外傷が複数あったと話した。これには、「ミサイルの砲撃」による右前腕の負傷、「建物の一部が落下」したことによる左脚の負傷、さらに砲弾の破片による複数の傷などが含まれるという。

「こうした複数の傷は重度の損傷をもたらしたが、死因は頭部を撃たれたことだ」と医師は話した。

(英語記事 Israeli attack said to have killed dozens in Gaza

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cjwdeze84qxo


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