同年7月には、米FOXニュースのインタビューに答え、さらにこの和平をもたらす計画の詳細を説明した。
トランプ氏は「私はゼレンスキー氏のことをよく知っている。プーチン氏のこともよく知っている。(ゼレンスキー氏よりも)さらに良く知っている。両社とも良好な関係を築いていた」と前置きした。
和平を達成するために、ゼレンスキー氏とプーチン氏に何を伝えるかと尋ねられると、「私ならゼレンスキー氏にこう言うだろう。『もう十分だ。合意を結ばなくてはならない』。プーチン氏にはこういうだろう。『もしあなたが合意を結ばなかったら、我々はゼレンスキー氏にたくさんのものを与えるだろう』と。必要であれば、我々はウクライナに彼らがこれまでに受け取った以上のものを与えるつもりだ。私は1日で合意を結ぶ。1日でだ」と答えた。
一見して、この発言はウクライナ寄りのようにも思えるが、トランプ氏はその後、政権復帰を目指す中で、具体的な詳細を語るのを避けてきた。その姿勢がさまざまな憶測を呼んだ。
プーチンとの個人的な関係も
そんな中で、トランプ氏が共和党候補としての地位を確立した今年4月、米ワシントンポストが特ダネを報じる。同紙は匿名の情報筋からの情報として、トランプ氏がウクライナに譲歩させる案を画策していると伝えた。
トランプ氏はブレーンらと話し合ったのち、ゼレンスキー政権に対し、14年にロシアの支配下に置かれた南部クリミア半島や東部ドンバス地域をあきらめさせ、ロシアに引き渡すよう促すのだという。
ゼレンスキー政権はロシアが本格侵攻を初めて拡大した支配下地域だけでなく、そもそもクリミア半島やドンバス地域からもロシア軍を追い出そうと激しい抵抗を続けている。ワシントンポスト紙が報じたような案であれば、ゼレンスキー氏がこれを拒絶することは目に見えている。さらにバイデン政権が取ってきたウクライナへの軍事支援政策も根本的に変えることになる。
米国はロシア軍の進軍を退けようとするウクライナにとって最大の支援国。これまでのバイデン政権下で武器、弾薬、防空システムなど総額60億ドル(約9兆円)以上の支援を行ってきた。
「米国第一主義」を掲げるトランプ氏はこうした民主党政権の姿勢に対しても反対しており、西側民主主義国の中でのウクライナへの軍事支援の米国の比重を下げたい思惑も見え隠れする。
トランプ氏は24年4月、米タイム誌のインタビューで、11月の選挙で当選してもウクライナへの軍事支援を続けることを努めるが、欧州諸国は「相応の負担をしていない」として、米国と同様に「自らの役割を果たさなければならない」と訴えてみせた。