2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月4日

 Foreign Policy誌(Web版)は、10月16日付けで、スティーブン・ウォルト・ハーバード大学教授による、リアリストにとって今回の大統領選挙で重要なことはトランプの当選を阻むことである、と主張する論説‘Kamala Harris Is Not a Realist. I’m Voting for Her Anyway.’を掲載している。概要は次の通り。

トランプ氏はリアリストなのか(ロイター/アフロ)

 私(ウォルト)のようなリアリストで対外関与を抑制すべきと考える者はトランプとバンスを支持すると考える向きもあるかもしれない。トランプとバンスは米国の欧州とアジアの同盟国に対して、自国の防衛のためにもっと負担を負うように求めており、ウクライナの戦争を終わらせるべき時が来ていると主張している。それゆえリアリストを自称する者の中には彼らに魅了されている者もいるが、私はトランプとバンスの欠陥に目をつぶることはできない。

 まず、トランプはリアリストではない。トランプは、粗野なナショナリスト、一国行動主義者であり、トランプに「イズム」があるとすれば、それはナルシシズムに他ならない。

 トランプは、大統領の座にあったとき、外交上の建設的な利得を上げることではなく、世間の注目を集めることに熱心であった。そのため、北朝鮮の金正恩、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領との首脳会談は、成果のないリアリティ・ショーにしかならなかった。

 その反面、トランプは、イラン核合意から離脱することでイランが核開発を再開することを許した。気候変動のパリ協定からも離脱した。環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱することで中国に対抗するための努力を弱め、アジアの同盟国との間で紛議を起こした。

 こうした外交は、まともなリアリストであれば到底支持し得ないことである。そもそもリアリストであれば、米国民を分断し、お互いを恐れるように仕向けることが米国を強くし、偉大にすることになる、などとは考えないものだ。しかし、それこそがトランプが行っていることである。


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