2024年12月7日(土)

バイデンのアメリカ

2024年11月2日

 「ファシストの大統領が返り咲けば、米国民主主主義は崩壊する」――。米大統領選の最終盤に入り、ハリス陣営は、無党派層向けにトランプ候補の「危険な資質」を徹底攻撃する大胆な賭けに出た。しかし、「経済」「移民」問題での劣勢挽回につながるかどうか、きわめて微妙だ。

大統領選終盤、ハリス陣営は大きな賭けに出た(AP/アフロ)

ハリス支持が伸びなかった3つのハードル

 今回の大統領選でハリス候補は、選挙資金力、運動員の動員力、メディア露出、弁舌、人格的資質、人柄、年齢、バイタリティ、新鮮さなどいずれの面でもトランプ候補より優位な立場のはずだった。これといったスキャンダルや失態に見舞われることもなかった。

 だが、投票日直前での世論動向調査では、トランプ氏がわずかながら優位かほぼ横並びの状態から抜け出せなかった。

 なぜ、ハリス候補への支持は、陣営が当初期待したほど伸びなかったのか。立ちはだかったのが、「3つのハードル」だった。

 すなわち、女性であり、黒人であり、さらにバイデン氏に代わり急遽、正式な大統領候補となってからの選挙期間がわずか3カ月の余裕しかなかったという事実だ。

 まず、「女性大統領」誕生の壁の厚さを示した好例が、2016年大統領選挙だった。

 ヒラリー・クリントン民主党候補はトランプ候補相手に大接戦を演じ、総得票数ではトランプ候補に300万票余の差をつけたものの、ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンなどの重要州の大統領選挙人獲得レースで敗れ、辛酸をなめた。

 その際の、両候補の男性有権者、女性有権者投票率を見ると、女性有権者ではクリントン候補(54%)がトランプ候補(41%)に大差をつけたが、男性有権者では逆に、トランプ候補(52%)がクリントン候補(41%)を引き離した。男性の間での対女性評価の低さを裏付ける結果となった。

 さらに、有権者全体の40%近くを占める白人女性有権者投票動向を振り返ると、クリントン候補に対する投票率は43%にとどまっており、女性の間でさえも、「女性大統領」誕生に対するある種の抵抗感があったことを示している。

 今回選挙においても、女性ゆえのハリス氏のハンディキャップはぬぐえない。投票日直前の支持率調査を見ると、ハリス氏に対する女性の支持率は53%を占めたが、男性支持率は36%にとどまった(ニューヨーク・タイムズ紙/シエナ・カレッジ調査)。

 これまでの選挙戦通じ、トランプ候補のみならず、J.D.バンス副大統領候補も、女性としてのハリス候補侮蔑発言をたびたび繰り返してきたこと自体、こうした世論調査結果をある程度踏まえたものであることは間違いない。


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