「民主党当事者たちの間で、近代の大統領選挙の中でも今回ほど、投票日目前まで多くの州で大接戦となった例はないことを疑う人はほとんどいない。接戦諸州でのさまざまな世論調査結果でも、優劣は誤差の範囲内であり、1ポイントか0.5ポイントの違いが勝敗を決することを示している。しかし、最近の数週間こそ、両陣営の戦況が著しく拮抗するにつれて、民主党内で不安が高まった時期もあったが、今では『控えめな自信tempered confidence』が台頭している。そして、ハリス氏個人や党リーダーたちも、選挙戦開始以来の『ハリスは劣勢』だとしてきた自重気味の警戒感さえ破棄し始めた」
「民主党系政治献金団体の一部に異論があるものの、ハリス氏側近たちは、トランプ候補をファシズムと結びつける論陣が共和党穏健派を自陣に引き寄せつつあると信じている。民主党関係者たちも、(トランプ氏が当選した)16年大統領選挙以降、様々な議会選挙などを通じ、彼を『国家分断主義者』と形容することで勝利を得て来たことに自信を深めている。この点で、トランプ氏がヒトラーを評価してきたことや、ファシスト的思想の持主であることを暴露したケリー前大統領補首席補佐官の発言によって、態度未定のユダヤ系有権者が動かされることをトランプ側近の何人かも心配している」
国家分断との決別を呼びかけ
さらに、ハリス候補自身も、こうした「トランプの恐怖」に焦点を当てた個人攻撃に手ごたえを感じたのか、投開票まで残り1週間となった去る29日、ワシントンのホワイトハウス前広場の大規模集会で、これまでの選挙戦を総括する最後の重要演説を行った。
30分にわたる演説の中で、「トランプは国民を分断し、市民同士を恐れさせ続けるために10年間を費やしてきた」「彼はこの集会の場所に4年前に立ち、(バイデン氏を当選させた)民意を覆すために暴徒を議会に送り込んだ。今回の選挙は私たちに、わが国を自由の国にするのか、混乱と分裂の国にするのかの選択を求めている」などとして、集まった7万5000人近くの聴衆を前に、国家分断との決別を熱烈に呼びかけた。
演説はTVを通じ、全米に実況中継された。
果たして、こうしたハリス陣営の最後の切り札ともいうべき作戦が期待通りの成果につながるかどうかは、誰にも分らない。