カナダ、メキシコ、中国の政府関係者は26日、アメリカの3大貿易相手国に大幅な関税引き上げを課すとするドナルド・トランプ次期米大統領の公約は、アメリカを含む4カ国すべての経済に大打撃を与える可能性があると警告した。
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は、「一つの関税に対抗してまた別の関税が課されるという事態が、我々の共有のビジネスが危険にさらされるまで続くことになる」と述べた。
トランプ次期米大統領は25日夜、来年1月20日の就任式の直後に、メキシコとカナダからのすべての輸入品に25%の関税を課す大統領令に署名するつもりだと述べた。
また、中国政府が合成オピオイド(麻薬性鎮痛剤)の一種、フェンタニルの密輸出を食い止めるまで、中国製品に10%の追加関税を課すとも述べた。
これらの関税はアメリカへの麻薬密輸や不法移民を取り締まるためのものだとしている。
この表明から数時間後、カナダのジャスティン・トルドー首相はトランプ次期大統領と電話で協議したと発表。27日にカナダの各州のトップと会合を開いて対応を協議する予定だとも述べた。
米ワシントンにある中国大使館のスポークスマンは、「貿易戦争や関税戦争では誰も勝者にはならない」とBBCに語った。
米次期大統領の関税計画に国際的反発
トランプ次期大統領が自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、来年1月20日の就任式の直後に関税を課す計画を発表すると、国際的な反発を招いた。
カナダのトルドー首相は、自国には「建設的な方法」でアメリカと連携する用意があると述べた。
「そうした関係には一定の努力が必要で、我々はそのつもりでいる」と、トルドー氏は記者団に語った。
トルドー氏はトランプ次期大統領との電話会談で、貿易や国境警備について話し合ったとし、カナダ国境を越えてアメリカに流入する移民の数は、メキシコ国境を越えてアメリカに流入する移民に比べてはるかに少ないと指摘した。
トランプ次期大統領側はトルドー氏と電話会談を行ったかどうか明言を避けた。
しかし、次期大統領のスポークスマンのスティーヴン・チャン氏は、世界の指導者たちが次期大統領と「より強い関係を築く」ことを求めているとし、「それは彼(次期大統領)が世界の平和と安定の象徴だからだ」と付け加えた。
メキシコのシェインバウム大統領は26日、脅したり関税をかけたりしても、「移民をめぐる事象」や、アメリカでの薬物摂取は解決しないだろうと記者団に述べた。
シェインバウム氏はトランプ次期大統領に送付するという書簡を読み上げる中で、メキシコはアメリカからの輸入品に独自の関税を課して報復するつもりで、そうなれば「一般企業を危険にさらすことになる」と警告した。
また、メキシコはアメリカに流入する不法移民の問題に対処するための措置を講じているとし、「移民集団はもはや国境に到達していない」と述べた。
麻薬問題については、「あなたの国の社会における公衆衛生と摂取の問題」だと付け加えた。
メキシコ大統領に先月就任したシェインバウム氏は、アメリカの自動車メーカーが部品の一部をメキシコとカナダで生産していると指摘。
「関税が引き上げられて困るのは誰か? それは(米自動車大手の)ゼネラル・モーターズだ」と述べた。
こうした中、在米中国大使館の劉鵬宇報道官は、「中国とアメリカの経済・貿易協力は、本質的に互恵的なものだ」とBBCに語った。
フェンタニルを含む違法薬物の製造に使われる化学物質がアメリカに密輸されるのを中国が許可しているとの主張については、事実ではないと否定した。
「中国は特定の事例に関する手がかりの検証を求めるアメリカの要求に応え、行動している」
「これらすべての対応が、中国が故意にフェンタニルの前駆物質をアメリカに流入させているとの考えが事実と現実に完全に反していることを証明している」
ジョー・バイデン米大統領は、第1次トランプ政権が導入した対中関税を据え置き、バイデン政権独自の関税をいくつか追加した。
現在は米中が互いに輸入品の大半に関税を課している。中国からの輸入品の66.4%と、アメリカからの輸入品の58.3%が関税の対象となっている。
パニックに陥ってはならないと
カナダのトルドー首相は下院で、「アメリカと(貿易)戦争を行うというのは、誰も望んでいない考えだ」と語った。
そして、パニックに陥らずに連携するよう下院議員たちに呼びかけた。
「それが、私たちが真剣に、整然と行うべき仕事だ。パニックに陥ることなく行うべきだ」とトルドー氏は述べた。
カナダの各州のトップは、アメリカに独自の関税を課す可能性を示唆した。
カナダのクリスティア・フリーランド副首相は26日、「私たちがアメリカに売っているのは、彼ら(アメリカ)が本当に必要としているものだ」と述べた。「私たちは石油を売り、電気を売り、重要な鉱物や金属を売っている」。
アメリカのデータによると、カナダは2022年のアメリカの総輸入額のうち約4370億ドル(約66兆5000億円)を占め、同年のアメリカの最大の輸出先でもあった。
カナダの輸出品の約75%はアメリカに送られている。
カナダで最も人口の多いオンタリオ州のダグ・フォード首相は25日、米次期大統領の関税案は「カナダとアメリカの労働者と雇用に壊滅的な打撃を与える」ことになると述べた。
「私たちをメキシコと比較するなんて、私がこれまで耳にした中で最も侮辱的なことだ」とフォード氏は述べた。
ケベック、サスカチュワン、ブリティッシュコロンビアの各州の首相もフォード氏に同調している。一方、アルバータ州のダニエル・スミス首相は、米次期大統領は「両国が共有する国境での違法行為に関連し、もっともな懸念」を抱いていると認める内容をソーシャルメディアに投稿した。
トランプ次期大統領が1月にカナダからの輸入品に関税を課すと宣言して以降、カナダドルは急落している。
カナダ・ドルは対米ドルで71セントを割り込み、トランプ氏が1期目にカナダからの輸入品に関税を課すと脅した2020年5月以来の安値になった。メキシコ・ペソは対米ドルで4.8セント前後まで下落し、今年最安値となった。
(英語記事 'No-one will win' - Canada, Mexico and China respond to Trump tariff threats)