第二の可能性は台湾が中国の武力侵攻を受けた際に米国が軍事的に介入しないことが明白になる場合で、これは中国にとり武力侵攻の誘惑になる。既述のWSJへのトランプの回答は(おそらく)インパクトを理解さえせずその事態を招いている。
なお、WSJは更に米国が軍事力を使う事態にはならないという意味か、と追求しトランプは次のように答えている。「彼(習近平)は私を尊敬しており、私が著しくクレイジーであることも知っているので、私が(軍事力を使う)必要はないだろう」。これでは不安が増幅される。
彼が著しくクレイジーだ(強大な軍事力を使う)と皆が恐れているかどうかは、今後トランプの脅し対するハマス・イランの反応などで試される。第一次政権では、トランプは対イラン軍事行動については臆病だったと自ら公表している。
日本にとっても懸念
そして、台湾への防衛費増大要求は他人事ではない。台湾国防費の対国内総生産(GDP)比は24年度実績で2.38%、25年度予算では2.45%、台湾当局は3.0%を目指していると明言しているにもかかわらず、トランプは不足だと批判している。
彼の目から見れば台湾有事は日本や韓国が対応すべき問題であり日本の国防費に対しても同様の要求をしてくる可能性がある。HNS(在日米軍駐留経費負担)については現行特別協定が27年度で期限が来るのでトランプ在任中に改定交渉が必要になる。
仮に国防費・HNSを増やしたとしてもトランプ下の米国が同盟国防衛義務を果たすことに一層真剣になるかどうかは不明だが、それ無しには日米間の数少ない懸案であり続ける可能性がある。