2024年12月28日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年12月27日

 ペロシは現役下院議長として2022年に訪台したが、これは過去四半世紀中最高位の米高官の訪台だった。ペロシ訪台は中国の激烈な反応を招き、中国は1週間に渡りミサイル、戦闘機、戦艦で台湾を取り囲み軍事訓練を実施した。

 この後、頼はマーシャル諸島、ツバル、パラオを歴訪する。これらの諸国は残り少ない台湾と外交関係を持つ国だ。彼はその後米軍の大規模施設があるグアムを訪れ帰国する。

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中国との武力紛争が起きる2つの可能性

 頼総統がトランプ政権成立前に米国にとっての台湾の重要性をリマインドすべく最後の努力をしている。外交関係のある太平洋諸国への歴訪途上にハワイ、グアムに寄るのは妙案だ。

 ワシントン訪問と異なり多数の政府・議会関係者と膝詰めで話ができないという短所はあるが、グアム・ハワイが実際の台湾有事で果たす役割は大きく関係者に直接台湾の重要性を訴えることの意味は大きいし、ワシントン訪問のように必要以上にプレイアップされ中国側が公開の場で強い反応をせざるを得なくなるという危険性も避け得る。中国側が、今後厳しい反応を示すのは不可避だろうが。

 トランプ政権下の米台関係は、ボルトン補佐官回顧録に示されたトランプの絶対的「無関心」と第一次政権中に多くの対台湾武器供与や高位の米政府高官の訪台が行われたこととの間にギャップがある。すなわち、トランプ大統領を補佐する閣僚クラスがどれだけ台湾の重要性を理解しているかに今後の対台湾政策はかかっているということだ。

 その意味ではトランプ政権の対中政策を主導する国務長官候補のマルコ・ルビオと国家安保担当補佐官候補のマイケル・ウォルツは、双方とも筋金入りの対中強硬派であり台湾問題への理解もあることから一定の安定感はある。

 一方、トランプ大統領自身の口に戸が立てられないのが一番の不安要素だ。大統領選挙直前の10月18日にWSJ紙で「中国が台湾侵攻したらどうするか」との質問に答え「自分は150%から200%の関税を課すと言う」と述べた。問題は中国の台湾侵攻に対して米国が武力を用いて対抗しないということを示唆する点だ。

 中国を含む全当事者が現時点では台湾を巡る武力紛争発生を望んでいない中で武力紛争になり得る場合が2つある。第一は、台湾が独立宣言をすることで、だから日米共に反対を明言しているし台湾側が過度に自信過剰・喪失にならないように注意深く対応している。バイデン大統領が台湾が武力攻撃された際に米国が軍事介入するかどうかと問われ公開の場で肯定的に応じる一方で、米国政府が従来の「曖昧政策」を維持していると繰り返してきたのは、正にこの一環だ。


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