大きな震災が発生したとき、多くの人が自分に何ができるかを考えることは決して珍しいことではない。影響力の大きな有名人やアスリートも、発生当初の被災地に目を向ける。実際に現地へ足を運び、支援活動を手伝ったり、義援金を呼びかけたりする。筆者も記者時代、何度も多くのアスリートのこうした姿を取材してきた。
「被災地の現状を風化させてはいけない」「10年先も続けていくことが大事だ」
みんな立派なことを言う。しかし、1年が経過し、2年、3年と年月が過ぎると、ほとんどの人が被災地から足が遠のく。理由はそれぞれにあるだろう。多忙だから、行きたくてもスケジュールが調整できないから……。しかし、羽生さんは違う。
自ら行動し、月日を重ねても継続してきた。
被災地に寄り添うとは何か。自分にできることは何か。自ら考えて実現させ、途切れることなく続けてきた。
「また希望を届けていけたら」
羽生さんは24年も数多くのメディアに登場した。そんな中に目を引く2つの雑誌の特集があった。
Newsweek (ニューズウィーク日本版) の10月1日号「特集:羽生結弦が能登に伝えたい思い」と、週刊東洋経済11月30日号「被災地支援へのこだわり」だ。
読者層は必ずしも従来のファン層とは重ならないだろう。「プロスケーター・羽生結弦」のパフォーマンスとは違う一面が、ビジネスマンたちに刺激を与えるとして新たな注目を集めていることの証左だろう。
3年続けてとなる「notte stellata」へ向けた羽生さんのコメントにはこう綴られている。
「『notte stellata』がこうやって3回目を迎えるということは、何度も何度もその3.11のことを思い返したり、また、何かできることはないかということを模索しながら、たくさんの事を考えてここまで来たんだなということを改めて感じています。
また希望を届けていけたらいいなと思いますし、このショーを見た皆さんが笑顔で帰っていただけるような、そんな明るいものにできたらなと思います」