2024年7月20日(土)

勝負の分かれ目

2024年6月22日

 「五輪2連覇」の偉業を果たし、プロスケーターという新たな世界へと飛びだした羽生結弦さんがこの2年で見せてきた進化はいまだ限界が見えない。10万人以上が見守った公開練習SharePractice(シェアプラクティス)、スケート界では前例のない東京ドーム公演、自身初となる単独ツアー公演、そして被災地でのショーに加え、自らが中心的な役割を担うファンタジー・オン・アイスの今年の演技では「ガンダム」の世界観を宇宙空間と化したリンクで表現した。

想像を超える進化を見せた「2024 ファンタジー・オン・アイス」(松尾/アフロスポーツ)

 フィギュアスケートという枠を超えた羽生結弦作品は、どのように生み出されていくのか。5月11日発売の「Quadruple Axel 2024 羽生結弦 SPECIAL」(山と溪谷社)で、筆者が担当した単独インタビューから内容の一部を抜粋、編集しつつ、ショーを進化させていく原動力に迫った。

「何もないからこそ、難しく、楽しく、面白い」

 「本当にいまはありません」

 羽生さんの言葉に一瞬、驚かされた。

 3月11日に仙台市内のホテルで行われた単独インタビュー。羽生さんは座長を務め、被災地から希望を届けるアイスショー「notte stellata 2024」の3日間の公演を終えた直後にもかかわらず、柔和な表情でいくつもの質問に向き合ってくれた。

 疲れを見せることなく、こちらの意図をくみ取り、投げかけた質問に「いいですね」「(聞いてもらえて)うれしいです」とインタビュアーの気持ちを乗せてくれながら、次々と印象的な言葉を紡いでいく。

 2月に自身初のツアー公演となった「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd ”RE_PRAY” TOUR」の横浜での千秋楽が終わったばかりだったが、次々とサプライズと感動で観客の度肝を抜く羽生さんの“次回作”への期待は、早くも高まっていた。羽生さんはどんなプランを温めているのか。インタビューでも、そのヒントを探ろうとした。冒頭の言葉は、そんな羽生さんに、単独公演やツアーのこれからについて聞いたときの答えだった。

 すぐにその意図を教えてくれた。

 「本当にいまはありません。そのことで、自分がいま、クリエイティブな場所に身を置いているんだなと、改めて実感もできています。何もないからこそ、つくらないといけないですし、作り出していくからこそ、難しさはもちろんありますが、楽しく、面白いのだと思います」


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