2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2014年3月11日

 従来の避難訓練は、義務的、受け身だった。内容は固定化し、判断力が十分に養えなかった。そこで、参加者が地域のお祭りに参加するように、自分ゴトとして捉えられる定例行事とするために、地域別に具体的なシナリオを描き、住民自らが主体的に参加できる場を設ける必要がある。各自治体の住民が教訓を継続的に語り、体験していくことを目指す。

津波の避難訓練で、新設された避難階段を上る住民(提供・時事)

 12年9月、岩沼市での訓練を皮切りに、13年8月に山元町で自動車を利用した訓練も実施した。東日本大震災では、57%もの人が避難に車を使い、渋滞が各地で発生。多くの人が車中で命を落とした。自治体が定める防災計画では車による避難を原則禁止しているが、行政の指導だけではコントロールできない。情報技術を駆使し、住民や業者を交えた議論や訓練を重ね、車の走行台数を減らす実効的なルール作りが必要だ。

 日本は世界有数の「自然災害大国」であり、各地に過去の震災の教訓が残されていたが、後世に実効性のある形で伝えられているとは言い難い。必要な態度は、災害に正面から向き合い「正しく脅えること」だ。

 大震災において、何に対応でき、何に対応できなかったのか、課題を整理する必要がある。発災直後、津波情報が十分伝わらなかったこと。避難に必要な情報が提供されていなかったこと。一方で、情報を受け取っても適切な避難行動がとられていなかったことも指摘されている。

 人的被害を大きくした心理的要因として、危険な兆候に目を背けて安心材料にすがる「正常性バイアス」、半信半疑のまま周囲の人と同じ行動をとる「同調バイアス」、人命救助を優先させる「愛他行動」などが見られた。世代間の行動の違いもあった。避難行動をみると、小中学生や高齢者の避難は非常に良かったが、中間世代に問題が多かった。


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