2024年12月6日(金)

Wedge REPORT

2014年3月11日

 自然災害の脅威を科学的知識として理解し、それに対する事前の備えを行うこと、そしていざという時に、生きぬくための正しい判断と行動ができる知力・気力・体力・コミュニケーション能力を高めること。これらの能力こそが“災害と共存して「生きる力」”である。

 13年1月に立ち上げた「『生きる力』市民運動化プロジェクト」からは、「みんなの防災手帳」という成果が生まれている。これには、地震や津波からの避難方法を紹介する「10時間」、けがの応急処置やトイレの確保などが必要になる「100時間」など、災害の発生前から復旧・復興までが時間軸によって編集され、各段階で必要な情報が盛り込まれている。

 被災した時でもすぐに読めるようにイラストを多用し、文章は約140文字で簡潔にまとめられている。ほとんどのページに、東日本大震災の教訓を伝える被災者の声をまとめたコラムも掲載されている。全国に先駆けて、宮城県多賀城市が「みんなの防災手帳」を今春、市内の約2万5000世帯全てに配布する予定である。

震災ビッグデータを未来へ、世界へ

 震災の記録を伝承するために、あらゆる情報をアーカイブする「みちのく震録伝」という活動がある。11年6月、当初は東北大学の数人のメンバーで自主的に開始したが、様々な方面から協力をいただき、プロジェクトとしてスタートした同年9月には約100の企業・団体・組織の参加をいただいた。

 東日本大震災においては、過去の災害では見られなかった様々な記録が起こされた。特に、画像、映像、情報メディア、情報交換記録など、デジタル社会は大震災を国民レベルで記録していた。しかし、同時に大量の情報が時間の経過とともに保存されず消えつつあったことが、取り組みのきっかけとなった。

 重要なポイントは「あらゆる可能性を否定せずに幅広く情報を収集」することである。現在、震災記録登録数30万点、データ量は100TB超となっている。従来のアーカイブと違い、対象とする情報が幅広く、また画像や映像がタグ付けされ、検索が可能になっている。学校の授業や、地域の防災ワークショップの中で活用を高めたい。

 15年3月には、第3回国連防災世界会議が仙台市で開催される。災害科学国際研究所も、当日の経験や教訓を発信すると共に、防災学術研究の国際的中核としての役割を担い、防災・減災の政策立案等を支援することで国際社会への貢献を示したい。また、この国連会議を起爆剤として東北の復興に拍車をかけるための仕掛けを、産学官民の連携により構築していきたいと考えている。

◆WEDGE2014年3月号より









 

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