2025年2月19日(水)

BBC News

2025年1月30日

ドナルド・トランプ米政権は29日、政府による数千億ドルの助成金や融資などの資金拠出を一時的に停止するよう指示した行政管理予算局(OMB)のメモを撤回したと発表した。アメリカではこのメモを受け、政府の拠出金に依存する数百万人にパニックが広がっていた。

28日に流出した内部メモには、OMBが取りまとめた一時凍結の大統領令に、トランプ大統領が署名したと書いてあった。一時凍結は米東部時間同日午後5時(日本時間29日午前7時)に開始される予定だったが、直前に連邦裁判所の判事によって差し止められた。

首都ワシントンの連邦地裁のローレン・アリハン判事は、すでに実行されている連邦資金からの拠出を2月3日までは停止しないよう命じた。そのうえで、同日に次回審理を設定した。

資金凍結をめぐってはすでに、民主党主導の複数の州や、助成金受領者を代表する団体が、政府に対して訴訟を起こしている。

29日に政権が発行した新しい書簡には、「OMBメモM-25-13は撤回される」と記載されている。

この明らかな方針転換の理由は不明だ。

ホワイトハウスはなお資金凍結を模索

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は声明で、政府は依然として凍結を模索しているとした。

「これは連邦資金凍結の撤回ではない。ただ、OMBメモの撤回だ」

「なぜか? 裁判所の差し止め命令によって生じた混乱を終わらせるためだ。大統領の連邦資金に関する行政命令は完全に有効であり、厳格に実施される」

BBCはホワイトハウスに対し、トランプ氏がメモを撤回した決定と裁判所の差し止め命令の後、どのように計画を継続するのか明らかにするよう求めている。

OMBの代理局長は今週初め、各機関に対して「すべての連邦財政支援に関する義務や支払い活動を一時的に停止するよう」指示した。

この措置は、新政権の方針に沿った助成金や融資を評価する時間を確保するためのものだと説明された。

しかしこの命令は、どの機関やプログラムが影響を受けるのかについて広範な混乱を引き起こした。連邦資金にアクセスするためのオンラインポータルが一時的にオフラインになり、援助団体はサービスの停止を警告した。

こうした状況を受け、民主党は28日、出生地主義の廃止に関するトランプ大統領の動きについての記者会見を急きょ変更し、連邦資金の凍結決定を非難する内容にした。

民主党のチャック・シューマー上院少数党院内総務は命令が撤回された後、「トランプ政権は基本的に、家族を傷つけ、億万長者の友人を助けるために無法な行動を取っている」と記者団に語った。

また、共和党は今後も資金提供を阻止しようとし続けるだろうが、今回は「国民の抗議」があったから阻止されたと付け加えた。

「アメリカ全土での抗議がなければ、(撤回は)起こらなかったと思う。そして我々上院議員は、国民と協力してその抗議を示している。闘い続けるつもりだ」

シューマー氏はまた、トランプ氏は次に、OMBの長官候補を撤回すべきだとも述べた。

今回の命令は、トランプ氏が就任以来発表したいくつかの大統領令の一つであり、政府の規模を縮小し、連邦支出を削減することを目的としている。トランプ政権はこのほか、トランスジェンダーの権利や、アメリカで生まれた人に自動的に付与される市民権などを廃止する構えだ。

また29日には、連邦職員に辞職後に8か月間給与を受け取り続けるオプションを提供し、連邦労働力のさらなる削減を図った。

レヴィット報道官は、資金の停止により、政府が「ウォーク」的なジェンダー問題や、DEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムへの支出を削減できるようになると述べた。

ウォーク(woke)とは、差別や格差の問題を意識する傾向を指す言葉。

DEIプログラムは、さまざまな背景を持つ人々の職場への参加を促進することを目的としている。支持者は、こうしたプログラムが、歴史的および現在進行中の差別や、少数民族を含む特定のグループに対する過小評価を解消すると主張している。一方で反対派は、これらのプログラム自体が差別的である可能性を指摘している。

いくつかの州では、低所得者向けの健康保険制度「メディケイド」を通じて資金にアクセスする際に問題が発生したと報告された。ホワイトハウスは後に、同プログラムは影響を受けないと説明した。

また、社会保障給付やSNAP(補足栄養支援プログラム)、フードスタンプ(食費補助)など、個人に直接利益を提供するプログラムも影響を受けないとしていた。

この命令は現在差し止められているが、ホワイトハウスは、元のメモが連邦機関に対し、大統領令に従うための措置を取らせるという目的を果たしたと考えている。

NPO団体からは安心の声

ホワイトハウスを相手に訴訟を起こしている団体の一つ、全国NPO協議会のダイアン・イェンテル会長は、「このメモが撤回されたことを喜んでいる。昨日の不確実性と十分な通知の欠如によって引き起こされた混乱は、決して起こるべきではなかった」と述べた。

「全国のNPOとその支援を受ける人々は、少なくとも今のところ、ホームレス支援や住宅支援、災害からの救援と再建、レイプ危機センターや自殺ホットラインなどの重要なプログラムに対するすべての連邦資金を停止するという、無謀で有害な計画をホワイトハウスが撤回したことで、ほっと息をつくことができる」

イェンテル氏は28日の記者会見で、この命令が実施されれば、退役軍人向けの食料や住宅プログラム、家庭内暴力(DV)の被害者向けのシェルター、育児支援などが深刻な影響を受けるだろうと述べていた。

(英語記事 White House rescinds memo on freezing federal grants and loans

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c05l1yr7zrvo


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