2025年4月9日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月19日

 ウクライナ戦争の敗北のコストはとてつもなく高くつく、米国は過剰な楽観主義や悲観主義を排し、真に現実的になってウクライナを支援し、勝つことを選択すべきだと、2025年1月31日付のワシントン・ポスト紙でジョージ・ウィルが言っている。

ウクライナの敗北による被害はどれほどのものになるのか(Ukrinform/アフロ)

 ルビオ国務長官はウクライナに関して我々は「現実的」になるべきだと言った。が、危険なのは、何が達成可能かについての過剰な悲観主義と、敗北を選択した場合のコストを低く見てしまう楽観主義だ。

 副大統領になる前、ヴァンスは「ウクライナがどうなろうと興味ない」と言った。しかし、英情報機関MI6のムーア長官は、ウクライナを支持しない場合のコストは支持した場合のコストに比べて「とてつもなく高くなる」と言う。

 アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)のElaine McCusker、Frederick W. Kagan、Richard Simsが報告書の中でその理由を説明している。彼等は、プーチンが優勢になって中東欧を脅かせば、5年間で8080億ドルの国防費の増額が必要になると推定し、これは 2026年にウクライナ軍の崩壊を防ぐのに必要と彼等が推計するコストの7倍に当たる。

 AEIの報告書はウクライナの敗北が予算に及ぼす影響を予測しており、それによると、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)とロシア間に出現する 2600マイルの国境沿いに90万の兵を配備し、米国とNATOは対抗する兵力を配備する必要が生じる。しかもロシアは戦闘経験を積んだウクライナ人を徴兵できるが、NATOは通常戦争を戦う兵士を何十年も養成してこなかった。要するに、米国の防衛産業の生産能力を短期間で増強するコストに、26万6000の兵士増員のコストが加わることになる。

 プーチンのロシアは決して抵抗し難い勢力ではない。フィンランド国際問題研究所のAndrei KolesnikovはForeign Affairs誌の中で、ロシアのインフレ率は現在9%超でなおも上昇しつつあり、ロシア中央銀行はインフレ抑制のベンチマーク金利を21%としていると指摘した。

 シリアの親露政権の崩壊やトルコのエルドアン政権の敵意(ウクライナへのクリミア返還を要求した)は、プーチンの役立たずぶりを浮き彫りにする。100万に及ぶロシア人(多くは有能な若者)がロシアを離れ、また22年2月24日以降、ウクライナ領土の20%の占領のために70万人が死傷している。


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