2025年2月19日(水)

BBC News

2025年1月30日

アメリカの首都ワシントンの近郊で29日午後9時(日本時間30日午前11時)ごろ、アメリカン航空の旅客機と米軍のヘリコプターが空中衝突し、共に市内を流れるポトマック川に墜落した。米連邦航空局(FAA)などが発表した。旅客機には乗客60人と乗員4人、ヘリには兵士3人が乗っていた。市消防当局は30日朝(日本時間同日夜)、この事故で生存者がいる見込みはないとの見方を示した。

事故現場で続けられていた捜索活動は同日夜、状況が危険だとして中断された。

事故については、FAAや国家運輸安全委員会(NTSB)、連邦捜査局(FBI)などが調査を進めている。

当局は30日、旅客機の飛行記録や操縦室の音声を収めた「ブラックボックス」を回収した。BBCが提携する米CBSが関係者の話として報じた。NTSBが分析するという。

ブラックボックスをめぐっては、これより先に1個が回収されたとCBSが報じ、NTSBが30日その後の記者会見で、まだ回収されていないと打ち消していた。

NTSBのジェニファー・ホメンディ委員長は会見で、職員を総動員して調査に当たるとし、「すべての可能性について検討する」と話した。

これに先立ち、現地当局者や航空関係者らは30日午前7時半過ぎから記者会見を開いた。ワシントン市消防当局トップのジョン・ドネリー氏は、「この事故の生存者がいるとは考えていない」と述べた。また、航空機から27人の遺体と、ヘリから1人の遺体を収容したと明らかにした。

BBCが提携する米CBSは、緊急対応当局が30日朝までに少なくとも30人の遺体を事故現場で収容したと報じている。

アメリカン航空によると、事故機はカンザス州ウィチタ発ワシントン行きの5342便。機体はボンバルディア CRJ-700で、PSA航空が運航していたという。

FAAは旅客機について、レーガン・ワシントン・ナショナル空港の第33滑走路に接近中だったとCBSに説明した。

CBSはまた、当局者の話として、衝突した軍のヘリ「シコルスキーH-60(ブラック・ホーク)」には陸軍の兵士3人が搭乗していたと伝えた。訓練飛行中だったという。

軍はヘリについて、ヴァージニア州フォート・ベルヴォアから飛び立ったと述べている。フォート・ベルヴォアは、レーガン・ワシントン・ナショナル空港から約24キロメートルの距離にある大規模軍事施設。

アメリカのフィギュアスケート競技の統括団体「米フィギュアスケーティング」は、事故機に関係者が乗っていたとする声明を発表。「選手、コーチ、家族たちは、カンザス州ウィチタで全米フィギュアスケート選手権大会と共に催された代表強化合宿から戻るところだった」とした。

ロシア大統領府は、同国民も事故機に搭乗していたと明らかにした。ロシアのメディアは、フィギュアスケートのコーチたちや、元世界チャンピオンのエフゲニヤ・シシコワ氏、ヴァディム・ナウモフ氏が乗っていたと報じた。ロシア・タス通信によると、元ソヴィエト連邦代表のインナ・ヴォリヤンスカヤ氏も搭乗していたという。

中国外務省は31日、今回の事故で自国民2人が死亡したとみられると発表。「深い哀悼の意」を表明した。また、捜索・救助活動の進展に関する最新情報の提供と、速やかな原因解明、適切な事後対応をアメリカに求めた。

フィリピン国家警察(PNP)は、事故機にフィリピン人の警官1人が乗っていたと明らかにした

当局者らは、最初の記者会見を30日午前1時ごろから開いた。ワシントン市のミュリエル・バウザー市長は「とても悲劇的だ」とし、ポトマック川で救助隊などが「非常に暗く寒い状況で」救助活動を続けていると述べた。

市長は犠牲者や生存者の人数については説明しなかった。同市の消防トップのドネリー氏は、「生存者がいるのかわからない」と述べた。

ドネリー氏はまた、29日午後8時58分に職員が最初に現場に到着し、航空機が水中にあるのを確認したと説明。ポトマック川では300人態勢で救助活動が行われているとした。

一方、ドナルド・トランプ大統領は、「恐ろしい事故」だとする声明を発表。緊急対応に当たっている職員らへの感謝も表明した。

トランプ氏は30日の記者会見で、前政権下で航空管制官に障がいや精神的な問題がある人が採用されていたと、証拠を示すことなく批判した。トランプ氏は前政権が進めた「多様性、公平性、包摂性(DEI)」重視の政策に反対の立場を取っている。

CBSによると、当局は旅客機について、いくつかに分裂した状態で深さ1.5~2.4メートルほどのポトマック川の水中にあるとしている。

ヘリは川の中で上下逆さになっているが、ほぼ完全な状態で残っているように見えるという。

事故を目撃したという近隣住民のジミー・マゼオ氏は、旅客機の航路が通常とは違っているのに気づき、まもなくして上空で「白い炎」のようなものを見たと説明した。マゼオ氏は「流れ星かと思った」と言い、救急隊が現場に到着するまで「大ごとだとは思わなかった」と述べた。

事故を受けて閉鎖されたレーガン・ナショナル空港は、30日午前11時に再開された。当初は31日朝まで閉鎖されると報じられていた。

(英語記事 Black boxes recovered in deadly Washington DC plane crash

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ce8j65n2j25o


新着記事

»もっと見る