桜の花が散るころ、花の精にあおられた疫神(えきじん)が飛び回って疫病をはやらせる。そんな考えに由来するのが、「太秦(うずまさ)の牛祭」「鞍馬(くらま)の火祭」と並ぶ京の三奇祭「やすらい祭」だ。今宮神社のやすらい祭は毎年4月の第2日曜に斎行される。緋色の大きな花傘で疫神を惹きつけて疫社(えやみしゃ)で鎮め、無病息災を祈念する。
本社前では鬼が大きな輪になって舞を奉納する
「正暦(しょうりゃく)5(994)年に営まれた御霊会(ごりょうえ)が神社創建の起源となっていますが、平安時代以前から紫野(むらさきの)の地に疫神を祀る社があったと伝えられています。文献上で“やすらい”の言葉が使われたのは久寿(きゅうじゅ)元(1154)年のこと。これは華やかになりすぎた祭礼を禁止する内容でしたが、花傘や鬼の舞など、現在につながるやすらい祭の原型が、すでにできていたのが分かります」
と、今宮神社宮司の佐々木従久(よりひさ)さんは語る。